蟻は今日も迷路を作って

くだくだ考えては出口のない迷路に陥っている

夏休み/左側の怪我

事の都合をつけて、なんとか休みをもぎ取った。

取引先との進行中の仕事の兼ね合いがあるので、うちの会社では夏休みは各自がスケジュールの合間を縫って取ることになっている。

私の仕事はここで休みを取ってる場合ではないのだが、ここで取らないと冬までノンストップになるので、無理矢理にでも5連休にした。メリハリは大切だ。

妻の会社はお盆に夏休みになるので、今年は2人のスケジュールが合わず、1人で過ごすことになる。

とはいっても、今年の夏の暑さは殺戮的だし、どこに行っても宿命的に混雑しているので、たとえ休みの期間が同じだったとしても、どこへも遊びに行くことはなかっただろう。

 

さて、1人で過ごす夏休みになにをするか。

なにも決めていない。

涼しい部屋で本を読み、文章を書いたり、ギターを弾いたり、料理をしたりするだけだ。それでも充分、充実していると感じられるので、経済的な生き物に生まれてよかったと思う。

でも、なにかしらの予定が入っていたら少しは素敵だったかなとも思う。

 

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職場で怪我をしてしまった。

大したものではないのだが、左腕に細長く、痛々しい切り傷ができてしまった。それを見た人は「おいおいおいおい」と驚くくらいの傷だ。

「いえ、この程度大したことありませんよ。なあに、猫に引っ掻かれたようなもんです」と朗らかに笑ってみせると、相手は「そうなの…?」と心配しつつも笑ってくれる。

怪我を人に心配されるとなんだか嬉しい、という感情。

久しぶりだ。

 

その後、トイレでどうしてそうなったのかわからないのだが、左肘を強かにぶつけて、ちょっとしたアザになった。

びびび、と腕が痺れてしばらく個室で悶絶した。

肘を打って痺れるやつ、ファニーボーンという名前がついている。

ファニーて、バカにしてんのか。バカにしてんだろうな。欧米人の考えることはよくわからない。

 

体の左側ばかり怪我をしたり病気になったりするのは、悪霊がついているからだ、とどこかで聞いたことがある。本当かどうかわからないものの、なんとなくその迷信を信じている。

お盆も近いし、仕事も忙しくて疲弊していたし、弱みをつけねらってよくないものが入ってきたのかもしれない。酒を飲んで忘れよう。

ちなみに右側は、生き霊、つまり誰かの恨みによる呪いが祟るらしい。生きてる人間に恨まれるよりはマシだ。