蟻は今日も迷路を作って

くだくだ考えては出口のない迷路に陥っている

あと1日/ぐうの音/勝者は誰だ

日1日を乗り越えれば私はようやく夏休みに入れる。

夢の10連休だ。

10連休なんてしたら、もう、社会復帰できないよ。

休みに入る前に片付けねばならないことや引き継がねばならないことが山積している。休み中になにかトラブルが起こった時に「これあいつが担当じゃね?」となると格好悪いからだ。

以前いた先輩が「休みに入るたびに悪事が露呈する」タイプの人で、休み中に爆発して私や他の先輩が被害を被り、しかも私と業務を分担していた分その加害者にされる濡れ衣も多々あり、極めて、極めて、このように書いていて今更悔しくなってきた。あの先輩が異動してくれて心から感謝している。

私もそうなってはならない。

だから確実に引き継がねばならない。

いつもより意気込んで金曜を乗り切ろう。

 

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ヤカンから蒸気が出ていたのでカップ麺に注いだ。

3分経って麺をほぐそうと箸を入れると、麺がゴワついて崩れぬまま麺の塊がひっくり返った。

湯がぬるかったのだ。

30分くらい待てば食べれるようになるかと思ったが、麺はほぐれたものの粉くさくてとても食べられず、そのまま休み時間が終わったので泣く泣くすべて捨てた。

「前にもこんなことあったよね」その話を彼女にしたらそう言われた。

「あったね」

「学習しないね。なんかさ、食べ物系の失敗多いよね。それって学習しない、反省しないからなんじゃないの?その場限りでは悔いても経験を活かそうと思ってないから同じ失敗を繰り返すんだよ」

ぐう

ぐうぐうぐうぐう

正論なのでせめて「ぐう」とだけ鳴いてやった。

悔しい。

私はカップ麺にありつけず、日中のカロリーは菓子パン一個で耐え、腹ペコのまま在宅勤務した可哀想な人なのに、なんでそんな酷いこと言われなきゃいけないんだ。

「そうさ」私は開き直った。「おれは学習しない。こういう体たらくが神経の芯にまで染み込んでいるから、骨の髄まで学習意欲がないから、結果として浪人生活を送ったのさ」

「そうやってなんでもかんでも浪人ネタにする。浪人ネタでウケてんのは浪人した人だけだからやめた方がいいよ」

「すべてはあの『遅れをとった一年』に収束されてんだよ。生き方のすべてのミスがあそこに濃縮されてんだよ」

「で、その浪人を経てもなお、学習しないと……」

……ッ!!

もはや ぐうの音も出なかった。

「ははは」

「なに笑ってんのよ」

「人はね、情けなくなると、笑うんだよ」

「キモ〜」

 

私は信じてる。

人生は最後に笑った者が勝者だと。