私は被害妄想がひどくて、日々人類への憎悪を募らせている恐ろしい人間である。
どういうことか?
今日、帰りの電車で鼻をほじっている無骨な男子高校生がいた。鼻をほじっていると言ってもあからさまにほじっているのではなく、鼻の下に付いた鼻水を指先で拭っていた程度のことだ。
「やみちくり~」と思いながら電車に乗ったら、運悪く男子高校生の隣に立ってしまった。
彼が顔につけていた手を下ろした。
もしかしてこの手についた鼻水を我が一張羅につけられるんじゃないか?
あり得る。
この男子はとんでもない脳味噌ハイカラ野郎で、人の服に鼻くそをつけることを人生の悦びにしているかもしれない。祝福的な営みだと思っているかもしれない。
いや、思っているのだ。間違いない。そんで、私のぺらぺらの一張羅に鼻くそをこびりつけて、そそくさと逃げ、私が絶望するさまを家に帰って想像し、マスターベーションに耽るのだ。その分厚い無骨な手で。
クソッタレめ。
最低だそんな奴。重大犯罪者だ。極東軍事裁判ものだ。
私はこいつを許してはならないと思った。命に代えても始末しなければならないと思った。人類のためだ。許せ。私の剣に貫かれるとそなたの罪は清められ、安心しろ、必ずや天使がそなたを浄土へ導き、アッラーの慈愛の手をもってそなたを包み込むだろう。
殺す。
といったことを考えて一人脳内ブチギレて泡を吹いていた。
はっきり言って、ヤバい奴は私だ。
書いてて確信を持った。やべぇ。なんだコイツ。
ほとんど統合失調症みたいなもんだ。病気じゃないだけ性質(たち)が悪い。
気持ち悪い。
でも、こういうマイナスな妄想の広がりが創作意欲を高めてくれるので蔑ろにはできない。
私の被害妄想は習慣的で、毎日のように一人腹を立てては暴れまわることはなく、その場では泡を吹くだけにしてあとは小説などに昇華させることにしている。
だから、私から作るという行為を奪ったら大変なことになるだろう。
令和最悪の虐殺が起こる。
でも、この被害妄想、つらい。
ひどく消耗するのだ。
なんなんだコイツ……。