GW最終日ということで、みなさん、死んでますか?
文章を書く気力がほとんどないので、今日は気に入っている自作140字小説まとめをします。
1.
海でペアリングを失くす。はしゃぎすぎたんだ。
— 蟻迷路 (@arimeiro) April 4, 2019
スカートの裾を水浸しにして探したけど、とっくに波に攫われて、永遠に失われた。
ごめんね、ごめんね。私は浜辺で泣いた。
「海がオレたちに嫉妬したんだよ」そう言うと彼はリングを外して、
「くれてやる!」と、波間に投げた。
水面が小さく爆ぜた。
『海底に沈むひとつの宝』
私のサークルの先輩が昔、海ではしゃぎすぎてペアリングを失くしたらしい。先輩の彼氏がどうしたのか、彼氏とどうなったのかは知るところではないけれど、私が先輩だったらペアリングが二つとも海に沈んでいたら素敵だなと思った。
ペアリングは二つでひとつの宝物だから。
リア充爆ぜろ!とよく目にするので、水面に爆ぜてもらった。
2.
道端の石が妙に気になり拾うと、石の中から何か音がした。
— 蟻迷路 (@arimeiro) April 23, 2019
「ミーンミンミン……」
音に心傾けると、この石とどこかで会ったことがあるような、懐かしさがこみ上げてきた。
「次てつや鬼な〜」
僕の名前。友達の声。転がる音。
そうか。思い出した。
この石は昔、僕たちが石蹴りで使った石だったんだ。
『お久しぶりですね』という作品。
ここ最近書いた中ではいちばん気に入っていて、文章を噛みしめて情景を想像しながら読むと、心がぽわんと温かくなる。
石の中に眠っている記憶から昔を思い出すなんてことは少ないけれど、たとえば本とか場所とか音楽とか看板とか、私たちはあらゆるものに思い出を忍び込ませていて、楽しいばかりの思い出じゃなくて、つらいことやトラウマまで思い出してしまう。
そういうところが人間、愛しい。
石からあの夏の音が聞こえたら素敵だよね。
岩に染み入るなんちゃら。
3.
恋味の飴が売ってた。
— 蟻迷路 (@arimeiro) April 11, 2019
「どうせ甘酸っぱいよ」友だちはスカして言ったけど、結局私たち気になって、14粒入りを分け合った。
「少し塩っぱい?」
「そう?苦いよ」
「えー甘塩っぱいよ」
「甘苦いよ。大人の味」
つまりはよくわからない味。
だって恋してないからわからんし、春は始まったばかりだし。
『恋は淡い味』という作品。
恋=濃い、なので、淡い味にしてやった。ダジャレだ。
なんか勢いがいいよね。女子高生の爽やかな勢いがある作品に仕上がって満足している。少女たちがそれぞれ別々の味になってしまったのは、二人が恋を知らなくて恋のイメージが味に反映されたからなのだろう。
「恋味の飴が売ってた」と書き出したはいいものの、なんだそれ、と全然話が広がらなくて困った。最近はこういう感じで、良さげな書き出しを書いてから内容を考えている。
4.
貴方が教えてくれたのは燃えるような紅い恋だけじゃなかった。
— 蟻迷路 (@arimeiro) April 8, 2019
温もりと、悦びと、肌を重ね合わせる心地良さと、電話口で明かした夜の眠気と、特別な季節と、
色褪せない気持ちと、本当の淋しさと、夜空よりも青い悲しみと……。
貴方が教えてくれたのは燃えるような紅い恋だけじゃなかったのだ。
『知らない方が幸せだったのかしら』という作品。
最初と最後の文章が同じものを書きたいなと思って書いた。本当はタイトルを『貴方が教えてくれたのは燃えるような紅い恋だけじゃなかった』にしたかったのだけど、タイトルを別のツイートにしているから見てもらえないことも多く、見てもらえないのでは意味のない物語なので、最後の行に持ってきた。
ジッタリンジンというバンドで「プレゼント」という曲がある。
あなたが私にくれたもの キリンが逆立ちしたピアス~
あなたが私にくれたもの フラッグチェックのハンチング~
といった調子でひたすら「あなたが私にくれたもの」を羅列するだけの歌。だけど実は深くて、サビでは「大好きだったけど彼女がいたなんて」と歌われ、「あなた」と恋が実らなかったことが明かされる。
ということは、「あなた」は「私」の恋人ではなかったのではないか?「プレゼント」とは「あなた」の気を引くために「私」が買ったものだったのではないだろうか?という考察が成り立つ。
そう思って改めてこの曲を聴くと恐ろしいというか切ないというか……すごい曲だ。カラオケで歌うと途中でみんなに飽きられる。
この曲から着想を得て『知らない方が幸せだったのかしら』を書いた。
5.
雨が降ってる。君が眠ってる。僕はそっとベッドから出てバナナパンケーキを焼きはじめる。
— 蟻迷路 (@arimeiro) March 7, 2019
雨が降ってる。君が眠ってる。
僕はバナナパンケーキが冷めないうちに部屋を出ていく。
起きると窓が濡れていて、僕はどこにもいない。
テーブルには冷めたバナナパンケーキ。
君の大好物がさよならのかわり。
『バナナパンケーキの朝』という作品。
これも音楽から着想を得た。だからなんだか歌詞みたいな調べになっていると思いませんか?そうでもない?そうなんだよ。
温かい曲だ。
主人公の彼がどういう気持ちでバナナパンケーキを焼いて彼女の元から永遠に去るのか考えると、哀しくも怖い。
性格は悪いんだろうな。
6.
これっくらいの♪おべんと箱に♪おにぎり、詰めないで、私は朝、ため息をつく。
— 蟻迷路 (@arimeiro) March 29, 2019
もう弁当を作らなくていいのだ。毎朝大変だったよ。もう作らなくていいなら、せいせいするわ……。
……もう、作らないんだ。
テレビの占いも虚しく響く家で、春に上京した息子の運勢を気にしてる私は、ずっと母だった。
『大吉。ラッキーカラーはピンク』という作品。
ラッキーカラーのピンクが表すのは桜です。
歌から始まって物語の導入につなげてみたくて書いた。なんとなく調子が崩れていくようでそこのところが気に入っている。
3月29日に書いたのは、まさに上京した息子を想ってる母たちが全国にいるんだろうな、と思ったからだ。息子は大学生になるのだろう。
私が父親になって、娘が上京すると言ったらゲボを吐くかもしれない。心配過ぎて。息子だったら、おう、行っちまえ、と気前よく金を渡して上京させるだろう。
まだまだ先の、来るかもわからない未来のことだけど、娘がいたら私は手の付けられない子煩悩になる気がする。いい迷惑だ。本当に気を付けよう。娘がよくわかんない男を家に連れてきたら、ひとまずトイレに駆け込み、ゲボを吐くかもしれない。
父、嘔吐。
こんな父で良ければ、娘をよろしくお願いします(血の涙)。
いかがでしたか?
書いていたらなんだか気分が晴れてきました。
でも今日はこのくらいで。明日からもがんばりませう!せうせう!!