蟻は今日も迷路を作って

くだくだ考えては出口のない迷路に陥っている

僕たちはなんでもかんでも低気圧のせいにするけど

日はなんだか全身がむずむずするな、そのせいで集中力を欠いてミスが続くな、だんだん肩が凝ってきたな、神経が圧迫されて片頭痛になってきたな。

そんなときは大体低気圧のせいだ。

 

低気圧が東の海の上にいると高確率で頭痛を発症する。

月間の3分の一は頭痛に苦しみ、ほっとくと寒気を催して微熱が出るので、すこしでも怪しいと思ったら(つまり頭痛の片鱗を感じたら)迷わず鎮痛剤を服用する。

「あー薬嚥(の)むのめんどくせ。今日は大丈夫だろ」と油断して大丈夫だったことがないくせに、たびたび謎の慢心でもって不覚を取り、酷い頭痛に表情を歪める。そうなると薬を嚥んでも30分くらいは苦しまないとならない。

だが、これは逆に、薬を服用さえすれば頭痛は治る、そして「頭痛にならない」ということでもある。

 

こうなってくると薬の有無で一日の体調が決定する日もある。

パブロフの犬ならぬ、パブロンの犬になっていて、出先で頭痛薬を忘れたことに気付くとその瞬間から不安になって、なんだか頭が痛い気がしてきて、いよいよ本格的な頭痛になる。逆に、頭痛薬さえあれば安心して一日を過ごせる。

たぶんだけど、ちょっと良くない依存の仕方をしている。

 

 

ああ、今日は怠いな、と思ったらだいたい低気圧が海上にいて悪さしている。

そういうときは「低気圧のせいか」と自分を納得させて、じゃあしょうがないよな、今日はもう仕事もほどほどにして定時で上がろう、と甘やかす口実にして、帰りにコンビニでスイーツでも買おうかなどとくだらぬことばかり考えて時間をやり過ごす。

しかし、すべての低気圧が悪いわけではなく、ふつうに低気圧がいてもコンディションが最高なときもある。

低気圧が原因なときも もちろんあるけど、低気圧がまったく関係ないときも多いのだ。

 

(私の場合)体調と低気圧の関連性に法則はなく、ぶっちゃけその日の気分、コンディション次第なのではないか?と最近疑念を抱いている。

なんでもかんでも低気圧のせいにしてるけど、じつは低気圧が原因ではないのではないか?

「低気圧のせいだ」と誰かに言われたのを鵜呑みにしていただけで、本当は違う原因があるのではないか?

悪いときはすべて低気圧のせいにし、良いときは低気圧を顧みないでいた。低気圧をまるで邪神か、あるいは被差別民族のように扱っていた。

 それがもし、低気圧が無実だとしたら────

 

私はとんだファシストだ。

 

 

昨今「低気圧だから気を付けて」といった発言をSNS上でよく見かけるようになり、同志が多いのだろう、ツイートは多くのリプライやリツイートを稼いでいるが、そのフォロワーの中には私のように「低気圧を体よく言い訳にしている」卑怯者がいないとも限らない。

なんでもかんでも低気圧のせいにすればいいってもんじゃない。低気圧を都合の良い邪神のように扱うな。なんでもかんでも低気圧を理由にするな。

なかには「低気圧で体調が悪いと繊細ぽくて格好良い」とまるで演出かのように「低気圧ダルい」発言をしたり、シェアしている人間がいるかもしれない。本当の卑怯者だ。

 

 

とかなんとかいろいろ書いたけど、

マジで低気圧のせいで体調悪くなる人もいるし、私もすべてがそうではないけど、低気圧によって体調が左右される人間ではあるので、気候関係なしに年がら年中元気な人は低気圧弱者を「たかが低気圧で」と無理解に非難せず、「まぁそういう日もあるわな」と熱帯低気圧のように温かい目で見守ってあげてほしい。