我が家の玄関先で毎晩のように虫がたかり非常に困っている話を以前にしたが、これに対し恋人がこの世の全てを恨む発言、すべての虫を殺戮し根絶やしにするという発言をしたことについて、虫方面の方々には大変不快な思いをさせてしまったことをこの場を借りて謝罪しなくてもいい。そんな苦情どころかコメントすらも来ていない。だいたい、虫の話のときはアクセス数が悪いじゃないか。
今日も虫を殺す話をする。
強力な殺虫剤を購入し、玄関に撒いた。
スプレータイプで、噴霧から2か月間有効らしい。ドア、常夜灯、壁面、ベランダの天井にたっぷりスプレーした。
薬剤の付着した壁はシミになってしまった。よく見ると変色している。これ、なんかそのうち損害賠償とかあるのだろうか。2か月で効果が切れるらしいので、とりあえず2か月は様子を見ていきたい。効果が切れたら壁の色も元に戻るかもしれない。
かなり強力なやつで、マスク越しにも薬剤のにおいがした。しばらくくしゃみが止まらなくなった。
噴霧してから虫が壁につかなくなった。常夜灯にも以前ほど群がっていない。
蛾が明かりに引き寄せられて飛んでいたが、どうしても止まることができず、結局隣の部屋の玄関へ飛んでいった。薬の効果はてきめんのようだ。
毎朝のように玄関先に虫の死骸が落ちている。日々カナブンや小さいカミキリムシのような昆虫が仰向けになってくたばっている。きっとこれも薬剤のせいだろう。環境に及ぼす威力がとてつもない。
増えていく虫の死骸の量に、この薬剤がどれほど強力で恐ろしいものか察した。あまり噴霧しすぎると人体にも悪影響を及ぼすだろう。
ひどく恐ろしいことをしている気分だ。
ともかく強力な殺虫剤のおかげで蝉爆弾を浴びずに済むし、虫が寄り付かなくなったのは喜ばしいことである。
しかし、玄関周りに殺虫剤を撒くだけでは、対応として甘かった。私は舐めていた。虫たちの走光性を。光へのコンプレックス的な飢えを。
隣の部屋はもちろん薬を撒いていないので、うちに虫がこなくなった分、隣の部屋の常夜灯に虫が群がるようになってしまったのだ。
お隣の部屋の脇には階段が設置され、アパートに出入りするときはその階段を利用するのだが、虫がいるので入るのを躊躇う。蝉が、すごい音出してブンブン飛んでいる。
また、壁やドアだけでなく、ベランダの床にも薬を撒くべきだった。虫たちは壁に止まれない代わりに、床に着座しているではないか。
今日は帰りに床にいた蝉爆弾を食らってひどい目にあった。危うく蝉を部屋に入れてしまうところだった。
なぜ奴らは部屋の中に入ろうとするのだろう?
光だから?
すごく頭が悪い。
その話を恋人にした。
「明日朝、薬を撒いて」彼女は断固とした態度できっぱりとそう言った。
「すべて死んでほしい。意味不明、存在が。いますぐ死んでほしい。生きてちゃいけない。早急に殺すべき々
彼女の虫ヘイトは凄まじく、憎悪を強大化させ、「引っ越そう」とまで言い出した。
殺戮の夏がはじまる。