恋人がどこかからプラムをたくさん貰ってきました。
「会社の得意先の人がね、なんかたくさん持ってきたのよ」盗んだわけではないとわかって安心しました。
プラムは初夏の果物です。
袋から出すと甘酸っぱい香りが華やぎます。
桃とか梅とかプラムとか、この手の果物の香りってどうしてこう、嬉しいのでしょう。
今の季節って外歩いててもどっかの庭からこの手の甘酸っぱい香りがたまにして、すごくリラックスしてなんていうか肩の凝りが抜けるように癒されます。
季節の香り。
爽やかで、甘い香り。
経験していないのに心の底に染みついている日本の夏の光景がよみがえります。
「けっこう傷んじゃってるから食べるかどうにかしたほうがいいね」彼女が言います。
たしかに押すとブヨブヨしていて傷もついていました。大きなイクラみたいです。あまり保存もきかなそうです。
「プラム酒にするか」
「いいね」
しかし保存容器もないし、酒もないし、氷砂糖もありません。
時間は夜でスーパーに行くのも億劫、細かい雨も降っています。
それに、酒にするほどプラムの量もありません。
要するに、今年はプラム酒を造るタイミングではなかった、ということです。
しばらく保存方法を調べたあと、恋人が立ち上がり言いました。
「コンポートにする」
種を取って砂糖と煮込みました。
果物を煮込む経験ってあまりないものだから、いつも味噌汁を温めているアルミ鍋も困惑していました。
言い出しっぺの恋人に任せて私は横になり、部屋に満ちる夏の香りを楽しみました。
もう7月です。
追記
完成品です。