平熱を聞かれたら36.5度と答えてる。
私の平熱はいつから36.5度なのだろう?
私はちゃんと平熱を測ったことがない。
みんなは平熱をどうやって知ったのだろう。
「しかるべき機関で、しかるべき装置を使い、しかるべき手順を踏んで、しかるべき温度を測った」そういう人はいるのだろうか?
素人の推測だが、平熱は一か月にわたって毎日決まった時間に検温し、平均値を求めたものだと考えられる。
日常的に体温を測ってメモしている人なんてそう多くない。
みんなは平熱を知るためにそういう期間を設けていたのだろうか?
ちゃんと自分の平熱を測ったことがある人なんてそういないはず。
みんな嘘とまではいかないけど、テキトーな数字を言っている。A病院では35.9度としたのに、B病院では36.1度になっている。そんな人もいるはずだ。
どこかのタイミングで平熱を知る機会があっただろうか?
「小学生の時に平熱調べなきゃいけなくて、一か月くらい毎朝学校に行く前に測っていたよ。だから今もその平熱の温度使ってるけど、たぶん変わってるだろうなぁ。血圧あがったし」と昭和生まれの先輩は言う。
言わない。そんな先輩いないから。嘘です。すみません。
嘘なのはともかく「小学校で平熱を測らなきゃいけなくて一か月くらい毎日記録していた」という記憶があるような気もする。
カレンダーが印刷された藁半紙のプリントに毎日の体温を記載するのだ。それをクラスごとに集めて保健の先生に提出するのだけど、もちろん集計日に忘れてくるやつもいる。そもそも測り忘れてて提出直前にでっちあげの体温書くやつもいる。平均の求め方がわからなくてめちゃくちゃな数字になっているやつもいるし、なぜかプリントが破けているやつもいるし、ちゃんと体温を測ってちゃんと記載しているのにまったく評価されないやつもたくさんいる。私はこの中なら提出直前にでっちあげるタイプだった。
黒板消しクリーナーにチョークの粉が溜まっていて粉っぽい甘いにおいがする。給食のみかん皮が落ちてる。消しゴムの角が割れている。鉛筆を両端削ってる。
想像すればするほど、たしかに小学生の時に平熱を測定した気がする。
36.5度の平熱はあながち嘘でもないけど信頼性は低い。たぶん私の平熱はもう少し高い。
じゃあどうして36.5度なのかというと、いちばん無難な体温だからに尽きる。高くもなく低くもない。「36.5度です」と伝えて訝し気になる看護師はいない。波風立たせたくない。
TheMirrazがその曲の中で歌った体温も36.5度だった。36.5度は平熱の中の平熱だ。なにも起こらない温度なのだ。
平熱をさも平熱的な温度に設定して人生の平穏を(こう見えても)熱望しているのかもしれない。