なにかの、どこかで、目にしたのだが、キリンは自宅でペットとして飼ってもよいらしい。
家にキリンがいたら夢があるけど、実際問題、と言えるような問題がその夢には積載されまくっていて、キリンを飼うよろこびよりも、大変さのほうが大きくて、夢の半径を縮める。
散歩は?寝床は?うんちは?エサは?屋根は?庭は?病気になったら?
キリンは実物を見ると、尻込みをしてしまうほど巨大だ。模様もずっと複雑だし、まつ毛も中指くらい太くて長い。蹴られたら一撃で死ぬだろうし、コミュニケーションも無理なような感じがする。
いくら金持ちだって、キリンを飼うのは現実的じゃない。
インド像がいたら素敵だと思う。
象に乗って出社できたら、これほどよいことはない。
でも、象はうんちがすごい。
動物園の象舎を思い出してほしい。よく晴れた昼下がりだ。見物人もまばらで、穏やかな1日だ。大きな体のお母さん象と、そのちいさな娘が庭の真ん中で尻尾と鼻を振っていて、立派な牙のお父さん象が建物の陰で物思いに耽っている。そしてその傍には、草を丸め固めたうんちが朴訥として天を仰いでいる。
象にうんちはつきものだ。
サバンナの象のうんこよ聞いてくれ、という有名な短歌もある。
象ときたら、うんち。うんちの枕詞が象。
問題はうんちだけじゃない。象は、吼える。
それも子犬が鳴くようなものではなく、地響きを思わせる咆哮だ。サバンナやジャングルでは遠く離れた仲間を呼び寄せるために、遠雷のごとく声を放つという。
杉並区の住宅街でそんなことをされたらたまったもんじゃない。家の裏の受験生に怒られるだろうし、狭心症の隣のおばあさんは鼓動を止めるかもしれない。魚屋は店を閉め、豆腐屋は来なくなる。
象はエサの消費量もすごいらしい。あれだけの巨体、あれだけのうんちなのだから、当然といえば当然だ。米の2合、3合ではきかない量なんだろうな。ラグビー部くらい食べるだろうか?
インド象を飼うのもやはり現実的ではない。
でも、象に乗って会社に行けたら、やはりよいものだろうな。
すごく涼しげな気配がするし、渋滞の車だって押し潰せばいい。道路交通法は適用されるのだろうか?二段階右折とかするのだろうか?そもそも「歩行者」になるのだろうか?
飼ってみなきゃわからない。