おっさんてなにかと世間から馬鹿にされたり、好きでハゲたわけじゃないのにハゲを揶揄されたり、好きでくさいわけじゃないのに「くさい」「死ね」などと言われ、年間2万7千頭以上のおっさんが自治体によって殺処分されているのは由々しき問題であると同時に、生きているだけで死ななきゃならないなんて、おっさんは本当に哀れだ。殺処分前のおっさんの鳴き声を聞くと涙が出る。
……まあ、後半は興奮して誇張して嘘を書いてしまったが、おっさんが世間から虐げられているのは事実である。
自慢じゃないけど、私はおっさんが好きだ。
脂っこくて、加齢臭がして、ヨレヨレで、煙草くさくて、髭があって、何かをする前から半ば諦めていて、下心だけはちゃんとあって、美味い酒に喜び、なんだか可愛い。無垢とすら思ふ。をかし。
格好良いおっさんもいる。映画なんかに出てくる探偵役のおっさんだ。煙草をうまそうに喫み、けれどどこか嫌悪感を抱くように煙を吐き出し、ここぞというときは良いところを魅せるのだけど、自分はどこか一歩引いていて、そんなところが渋くて格好良い。男、って感じがする。
ハゲても格好良い人はいる。潔さは格好良さだ。残り少ないものを必死に寄せ集めてる方が悲しい。
実はかなり幼いころからおっさんが好きで、職員室のにおいが大好物であった私は祖父の臭いも好きで、煙草の匂いも好んでいた。どうしてそうなったのか原因は不明だが、これは運命と書いて「さだめ」と読むやつなんじゃないだろうか。
だから20歳になったら煙草を始め、酒を飲み、早くおっさんになろうと、幼少時より心に決めていた。
私は23歳になった。
元来白髪体質で、20歳を過ぎた頃から急激に白髪が増え始めた。耳の後ろと前髪、知らないだけで後頭部も白髪があるのかもしれないが、以前は前髪の白髪なんて1本か2本くらいで稀にしか見つからなかったのに、最近は鏡で見るたびに3、4本見つかる次第で、おいおいおいおい、老い老い老い老い、と妙に焦っている。
最近、民放のテレビ番組がつまらないばかりでなく、笑いのテンポや画面の明るさ、会話のスピードについていけなくて、見ていて苦痛なのでエネーチケーばっかり視聴しているのだが、エネーチケーってこんなに面白かったっけ?と驚いてる。目にも耳にも優しく、内容はためになることが多く、それでいて民放よりも攻めた姿勢があり、好ましい。エネーチケー万歳。
私は朝が苦手で、体が温まるまではトカゲのように動けないのだけど、それが最近さらにひどくて、よくわからないのだけど、歯を磨くと「おえっ」となるのだ。奥歯の方をゴシゴシすると「おえっ」となってしばらく涙目になってドロドロした唾液が分泌される。苦しいので困る。
最近は油っぽいものが苦手で、昔はドーナツを無限に食べることを特技としていたのに、今は一個で必要十分だし(さらに言えば半分でも十分条件を満たしている)、食べすぎると胸やけがひどくなる。生クリームとかチョコレートへの喜びも薄れてきて、甘味は芋けんぴくらいがいいなぁと思っている。パンケーキは食べるけど、無限にイケる!と豪語していたあの頃と比べて勢いの衰えがあることは認めざるを得ない。
私はおっさん化している。
しかも、望んでいない方向性で。まだ全然若いのに、急速に。
いざ「おっさん化」が現実的に始まると、こんなにも嫌なものかと思う。
ハゲだけは。ハゲだけは嫌だ。
こうしてハゲはまた揶揄されるのであった。