蟻は今日も迷路を作って

くだくだ考えては出口のない迷路に陥っている

集団面接めっちゃ好きだった思い出

 年、就活をした。

 就活解禁の3月1日までほとんどなにもしなくて、2月28日に恋人に明日からおれはどうすればいい?と人生になにもかも絶望したかのようなLINEを送った覚えがある。

 恋人は私より学年ひとつ上で、就活の先輩だったのだ。

「とりあえず学校へ行きなさい。学校で合同説明会があるから」

「服装は自由?」

「スーツ」

「アイロンしてない」

「アイロンなさい」

「アイロンのかけ方がわからない」

「ナメてんのか?」

 

 私はアイロンをかけ、翌日ベルトを通すのを忘れて大学で開催される合同説明会へ向かった。

 4年生の大半がいて、驚いた。いったいどこでそんな情報を手に入れたのだろう。なぜ私は知らなかったのだろう?組織ぐるみでハブられていたのだろうか?大学に一度クレームの電話を入れたからだろうか?事務室と険悪なムードになっていたからだろうか?

 

 そんな感じで私の就活は始まった。

 過去のこと、現在のこと、そして未来のことを真面目に考え、酒(ストロング系)を飲み、不真面目に考え、惰眠を貪り、飽きたので週4日就活をサボった結果、運よく現在の会社に決まったのだった。5月の初めだったと思う。就活生に有利な時期でよかった。

 

 就職活動は説明会→筆記試験→面接の流れで進んでいく。

 私は面接の中でも「集団面接」がいちばん好きだった。

 面接官数名ないしは1人に対して就活生数人で受ける面接である。

 就活生の返答の駆け引きやなにかいろいろ考えることはあるのだろうけど、私は頭が良くなかったから駆け引きなんてできないの、好きなのよ、AhAhAh~

 恋しちゃったんだたぶん気付いてないでしょう?

 星の夜願い込めてCHE.R.RY

 指先で送る君へのメッセージ

 

 と、だいたいこんなふざけた感じであった。

 こんなんでよく面接進んでいたと思う。良くも悪くも自然体だったのだろう。

 

 私が集団面接を好きだった理由は、ほかの就活生の話が聞けたからだ。

 大学で何を学んだか、なんのサークルに入り、何をしたか。とても興味深かった。

 へぇ、こんななりして軽音楽やってんだ確かに髪色が少し変な黒だなぁ。へぇこの人は茶道やってんだ。飲みサーだろうないろんな意味で。この人は学祭の実行委員か。そんな感じする。

 こんな風に楽しんでいた。

 その場限りの出会いと縁だからこそ、他人の人生の一部を覗いているみたいで楽しかった。しかも、面接である以上、誇張した事実はあれども虚実はない。こんな機会は滅多にない。

 私はIT企業を多く受けていたので、他の方の学んだことについては理系の専門が多く、知らない世界のことなのでそれもまた面白かったし、ロボットのコンクールで入賞した人もいて、ゴリゴリ文系の私と同席していていいのかと思ったりもした。また、同じ文系の文学系の人がいると心強かった。

 

 就活生の中にはめちゃくちゃ緊張している人もいて、笑ってはいけないのだけど笑いをこらえるのに必死になった。どうかしている。緊張感がなさすぎる。

 そのくらい、集団面接が好きだった。

 でも実際に集団面接を受けたのは2回だけで、残念だった。

 世の中には3度目の正直というのもあるし、3回目をもし受けていたら嫌な思い出になっていたかもしれないから、これでよかったのだろう。これで手打ちだったのだ。

 

 

 私が面接官になる時があったら、集団面接したいと思う。

 うちの会社は集団面接がないので、次は集団面接があるところに転職しよう。