蟻は今日も迷路を作って

真面目な話からそうでない話まで。本当の話から嘘の話まで。蟻迷路(ありめいろ)という人が書いてます。

書を捨て家を出よう

 来なら今頃は恋人と同棲しているはずだった。

 コロナ禍で部屋を選んでる場合ではなくなってしまい、とりあえず落ち着くまでは保留になってしまった。

 我々は今、歩みを止めている。

 ただ、止められているのではなく、あえて止まっているのだと、立ち止まってこれまでのことやこれからのことを考えるための時間なのだと前向きにとらえている。

 たとえば引っ越しはどういった手順ですればいいのだろう。

 なにを持っていき、何を置いていき、なにを捨てていけばいいのだろう。

 

 昨年購入した2枚の絵は持って行く。ギターは一本は必ず持って行く。ウクレレも持って行った方がいいだろう。レコードプレイヤーとレコードも全部必要だし、CDも気に入ってるものを20枚くらい持って行こう。生活に欠かせない音楽というものがあるのだ。

 

 さて困るのが、本、および漫画だ。

 全部持って家を出るには多すぎるし、だがそもそも実家に置いていくということはほとんど捨てるに等しいことだ。

 そう読み返す機会もない本が多いから、正直言ってほとんど全部置いて行ってもいいのかもしれない。が、そういうことじゃなくて、本に囲まれている、読んだ本が軒並み揃っていて自分だけの最高の図書館ができている状態が良いのであるわけで、本棚が充実しているというのは、たとえば冷蔵庫にごちそうがたくさん入っているのを見たときのようなワクワク感があって、たとえば日曜日の午前中に自動車をピカピカに磨いて滑らかに輝く車体を眺めているときのような充足感があるものなので、そうか、私は本を持って行きたいというより、その状態の本棚を手放したくないのだ。

 だけど、新居のスペースは限られているだろうし、なにせ住まうのは私ひとりじゃないのだから、好き勝手にできない。

 私は選択を迫られるだろう。

 

 本棚の段を埋めている村上春樹町田康……まぁ持って行くか……。漱石もけっこう読み返すしな……太宰ももちろん連れて行く……小笠原鳥類と岩倉文也の詩集も……

 現代の、とりあえず読んでおいたみたいな小説は置いてっていいかもな。卒論で使った論文も……いいかな……先生の論文集はいちおう持ってこ……5000円もしたし。

 ジョジョ文庫サイズ版の1部~7部の計66冊はどうしようか……『ブッダ』と『寄生獣』もけっこう幅をとるぞ……『GANTZ』はいいや……擦り切れるくらい読んだし……『鬼滅』はぜったいに必要。

 なんてなかんじに。

 

 本を捨てると大抵後悔する。

 すぐに後悔するのではなく、何年か経ってから、ああ捨てなきゃよかった、と突然思って、古い友達とワケもなく疎遠になったことを寂しく思うときのような、心にくっきりとした穴が開いてしまう。

 やたらと捨てないようにしよう。全巻揃っている漫画は思い入れも深いので捨てずらい。いくら飽きていたとしても。だけど全巻持って行くとかなりの幅が……どうすればいいのだ。

 

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 しかし。

 しかし既に置いていくことが決定している漫画がいくつかある。

 言わなくてもわかるだろうが、エロ漫画たちである(6冊もある)。