萌えアニメ、って言葉は古いけど、美少女たちがほとんど何もしないでグダグダしているだけのアニメや漫画はどの時期にも一定数存在する。
ストーリーに大きな起伏は無くて、4コマ漫画の形態を取っているものの、オチはなく、なんなら起承転結という概念すらなく、美少女が「はわわっ!」ってしたり「ふにゅ~」ってしたりするのを、とにかく眺めるために存在する漫画。
昔はそういう作品のなにがいいんだかわからなかったのだが、最近、ちょっとわかるようになってきた。
これはハマると大変なことになるぞ、と思って、無料配信されている第一話以外は読まない・見ないようにしている。
ハマるとかなり大変なことになりそうで怖い。
日々仕事で疲れている。
業務に忙殺され、くだらない人間関係やコミュニケーション不足による齟齬に心をすり減らしている。
仕事が終わるともうクタクタでなにもしたくない。食事すら「情報」で済ませたい。眠りたいわけでもないが、心ゆくまで眠っていたい。時間が欲しい。98時間くらい欲しい。
そういう心のテンションで、たとえば『進撃の巨人』をがっつり読むことはできない。いつ巨人に喰われるかわからない恐怖に心が疲弊しきってしまう。
『ジョジョ』なんてますます読めない。情報量が多すぎるし、疲れていない頭で読んでも理解するのに3回くらい読まないといけないので、仕事終わりの心は『ジョジョ』を受け入れがたい。
こういうとき、萌えアニメはとてもいい。
観ていてなにも考えなくていいし、眠って時間を削ぐわけでもなく、ぼーっと流しながらスマホをいじっていても問題ない。なにせ、ストーリーに特段動きがあるわけではないのだ。
エッチなハプニングがあるわけでもないし、登場人物たちはギスギスしないし、誰も死なないし、少女たちは大人にならない。
偏見だけど、男が主人公だったら物語は動き出してしまう気がする。男は「ただそこにいる」ということができない。いたずらをするし、冒険へ出かけるし、性欲が高い。偏見だ。こういう発言はやめた方がいい。
美少年たちが、ただダベったり海へ出かけたりするだけの作品はすでにありそうだけど、そういうのも結局、腐女子たちの餌食にされてしまいそうだ。これも偏見だろうか。
今になってわかる。
「けいおん!」とか「らき☆すた」が放送されていた当時、中高生よりも20代を過ぎた大人たちがハマっていた理由が。
日常生活の終りの無い擦り傷のような疲労から逃れるには、ホラーやサスペンスやバトルや恋愛のアニメではなく、綿で肌を撫でるような刺激の無い刺激を供給する萌えアニメがちょうど良い温度感だったのだ。
ワクチンだ。
疲れた心のワクチンだ。
ハマると大変なことになるから見ないけど、ハマると大変なことになるから見ないけど。