夜中にいきなりさ、じゃあないけど、昼頃に突然さ、友だち2人からLINEが来て、いろいろやり取りがあった末に、仕事終わりに銭湯へ行くことになった。
彼らは車に乗って21時頃に私の家の前までやって来た。
運転はさいきん免許を取った彼だ。
彼は免許を取るまでにかなり渋っていたのだが(なんか一年以上かかっていた気がする)、取るや否や実家のプリウスを乗り回し、今やいろいろなところへ安易に出かけているらしかった。
彼らは小中学校以来の友だちで、一緒にバンドを組んだり、ギターを燃やしたり、気が狂うまでゲーム(インベーダー)をして過ごしてきた、私の十代の欠片みたいな人たちだ。
竹馬の友、というやつ。莫逆の友、というやつ。
気心の知れた人と会うと自分がとてもリラックスしているのがわかる。
こういう時代のせいもあって半年ぶりくらいに会ったのだが、よくあるような、久しぶりに会った人と会話が弾まないことやそれによってなんだか気まずい空気になってしまうということはなく、半年ぶりに会ったというのに「昨日の続き」のような雰囲気で私たちの間柄は取りまとまっていた。
たぶん1年とかもっと長い時間が空いても、次に会うときも「昨日の続き」になるのだろう。
最初に向かった銭湯に3人で入ろうとしたら受付嬢に止められた。
「こういう時代だからグループ入湯はお断りしている。申し訳ないけど今日は諦めて凍えて眠ってほしい」
ひどい時代になったもんだ。
有料駐車場に停めてしまったものだから、どこか歩いて行ける距離に他の銭湯はないかと調べ、15分くらい歩いて隣町の銭湯へ行った。
私たち3人は集まるとたいてい歩くことになる。居場所を求めていくらでも歩き、疲れ果てて公園の隅に溜まって空を見つめ、ここにもどこにも何もないことを確認するのだ。
もう20代半ばになるんだから、そろそろ居場所を構えて彷徨わずにいたいものだ。
隣町の銭湯には、時間差で入湯した。
ここもやはりグループ入湯はお断り、と張り紙があったためである。
銭湯はやたら混んでいたし、私たちはバラバラに入り、終始他人のふりをし続け、バラバラに銭湯を出て、他人のふりをし続け気を遣って風呂に入るのは疲れるものだと笑った。
もうひとりの彼なんてあまりにもリラックスできずに、頭を2回洗っていた。神経だ。
湯気を立てながら、秋の夜を3人横になって歩いた。
大きい月が出ていた。街灯の下にヤモリがいた。低い高架があって電車を真下から見れた。小さい祠と、すごく細い不気味な道があった。何を話したのか忘れてしまったが、大切なことは3人でいることだからいいのだ。今も昔も。
23時半ごろに家に帰った。
久しぶりに友だちと会って、たくさんお喋りをしたので、なんだか喉が痛かった。
私たちは私たちくらいしか友だちがいないので、久しぶりに会ってお喋りをするとどうやって人と喋っていたのかわからなくなることがあり、どもったり、喉が痛くなったりする。
ずっとこんな感じなのだろうな。これからもずっと。
私が確信できる数少ないことのうちのひとつだ。