蟻は今日も迷路を作って

くだくだ考えては出口のない迷路に陥っている

きわまった退屈との格闘

事は忙しいくらいなら暇で平和な方がいいけど、何もすることが無くてただただ時間が過ぎ去っていくのを待つのは甚だ苦痛でもある。

こういうとき、在宅勤務で良かったと思うし、逆に会社に行けばなにかやることがあったんだろうな、ともおもう。

 

誰からのメールも電話も無く、チームのチャットも動かない。

外は気持ちよく晴れていて、空が高い。ほんのりと金木犀が香ってる。

 

ほんとうにやることがない。

整理すべき資料はないし、今日中にやっておかねばならない案件もない。どれも来週中にやればいいものばかりだ。

ふと、横になってみる。

仕事中にベッドに横になるということがいつもよりも布団を柔らかく、深くさせる。

外はよく晴れていて、風は乾き、金木犀が香っている。

どこからも何の音もしない。昼間なのに、夜中みたいに冷蔵庫のうなり音が聞こえてくるほど静かな平日。

しだいに、と言うよりもずっと微睡みの速度ははやく、気が付けばすとんと眠りに落ちてしまいそうだったので、起きた。

在宅勤務の敵はベッドだ。

 

しかし起きたとてやることはないので、ギターを弾いたり、写経をしてみたりして時間を潰す。

ふだん忙しい時はこの退屈な時間を、時間が過ぎるのを待つだけの時間を、心から望んでいるのに、いざ暇になるとそわそわしてしまう。

「今日は定時まで何も起こりません。誰からの連絡もありません」とわかっていたら、暇も嬉しいだろうが、仕事柄いつどんな連絡があるかわからなくて、リラックスしきれない。

いつも、結果として暇な一日だった、となるのだ。

 

業務日報になにを書けばいいのかわからない。

やってない仕事の内容を書く。それは、やってもやらなくてもいい種類の仕事だ。

まさか何もやってなくて書くことがないからって、「般若心経を三周写経しました」なんて報告するわけにはいかないのだ。中学校の「日直日誌」とはわけが違う。

来ていない問い合わせを捏造し、日報に書く。

あったらいいな、こんな問い合わせ。それをてきぱきと受け答えして解決に導くおれ。

嘘を書くことは馴れている。毎日1000字のブログも書いているんだぞ。

そうこうして、8.5時間ぶんの業務日報を書き終えたのが定時の一時間前だった。

まだ働いていない分の一時間を先取りして日報を書いてしまったが、どうせ何も起こりはしない。今日は長く退屈な一日なのだ。そういうことだ。

 

とか言ってると、定時の30分前にわけのわからない問い合わせが来て、1時間くらい残業する羽目になるのだ。そういう経験が何度かある。

でもまぁ、残業したら残業代出るし、やることあるならそれでもいいな、ともおもえた。それくらい、やるべきことに飢えていた。

 

結局なんの問い合わせも無く、その日の業務を終えた。

 

人生の時間は限られている、ということを遷り変る季節が教えてくれる。