蟻は今日も迷路を作って

くだくだ考えては出口のない迷路に陥っている

第一印象は「最悪」でした

一印象はかなり大事だ。

抱かれた第一印象はなかなか覆らず、第一印象で「最悪」と判断された場合、よっぽどのことが無ければその後良好な関係を構築することは難しくなる。

第一印象が薄れて別の印象に変わるまで、一か月くらいかかるってどこかに書いてあった気がする。ずっと昔、海ができる前に読んだ本にそう書いてあった。

そのくらい、第一印象が染まり変わることは難しいので、初対面の人ほど挨拶には気を付けた方がいいのだ。

睨みつけて「平伏せ馬鹿」と言うよりも、笑顔で「初めまして!」と快活に挨拶するほうが良いだろう。

 

第一印象の大事さを踏まえてみて、つくづく私に恋人がいるのは不思議なことだとおもう。

恋人に私の第一印象を訊くと「今にも人を殺しそう」とか「やばいやつ」とか「絶対に私のことを嫌いだ」などと、少なくともポジティブで良い印象を与えていなかったことが伺える。

一方で私は恋人の第一印象は「可愛い人だなぁ」だった。

第一印象がまっすぐに反対の両極であった二人が、よくもまぁうまくいってるものだ。

出会ってから付き合うまでに一年半くらい時間があったので、その間に私は彼女に抱かせた第一印象から挽回したのだ、とおもいたいけどそうじゃなくて、少なからず、恋人が私を理解しようとしてくれた努力があったのだ。

 

会社のみならず、学生時代から、私は誰彼となく「機嫌が悪そう」とか「怖そう」という印象を持たれている気がする。

今でさえ黙っていると恋人に「機嫌が悪いの?」と訊かれる。私がハッピーで至福に満ちていてもそう言われるのだから、私が醸すオーラはよっぽど邪悪なのだろう。

高校生の頃、現代文の先生がいつもニコニコしていて、造花のように奇妙な笑顔なのでなにがそんなに可笑しくていつも笑みを浮かべているのか尋ねてみると、先生は、

「おれね、真顔になるとすごく怖いんだよ。みんなを怖がらせないように、無理やりにでも笑ってんの」

と、真顔で答えてくれた。

その顔に見つめられて、デリカシーの無いことを訊いたと怖くなって謝った。

先生は、謝るなよ~といつものめちゃくちゃな笑顔で応えてくれたけど、以来、私には先生が笑っているように見えたことはない。

いまならなんとなく、先生の言わんとしていたところと、笑顔の狙いがわかるような気がする。

第一印象は引きずるし、「真顔」になって覆ってしまうとそれはそれで戻ることはできない。先生はずっと笑い続けるしかなかったのだろう。

 

誰にでもすぐに心を開く必要はない。それはそれで不健全だ。

しかし一方で、自分に接した人が打ち解けて心を開いてくれるようであるのが理想的だともおもう。

それでいて自分は心を開かず、相手のくだけた話や態度を観察してひっそりとニヤニヤしたい。

Excelに人々の特徴をまとめて、図鑑を作りたい。小説にしてやりたい。

 

 

こういうことを言っているうちは誰も心を開いてくれないし、私の第一印象は「最悪」のままなんだろうな。