蟻は今日も迷路を作って

真面目な話からそうでない話まで。本当の話から嘘の話まで。蟻迷路(ありめいろ)という人が書いてます。

久しぶりの外食

いて20分くらいの近所にイタリアンレストランがあるという噂を聞きつけ、我々(私と恋人)は土曜のランチ時、てくてくと歩いて向かった。

 

ここしばらく、休日はスーパーの買い出し以外には外出せずに過ごしてきた。外食なんて、二人で出掛けて外で食べるなんて、いつぶりだろう。

自分たちで作るごはんも美味しいけど、たまには外の味も食べたい。コンビニとかファミレスじゃなくて、そこにしかないレストランの味を知りたい。私たちは外食に飢えていた。

 

恋人は外へ遊びに行くときの格好をし、私も久しぶりにちゃんとしたズボンを履いた。スーパーへ買い出しに行くくらいなら すすけた埃っぽいズボンのかたちをした布で腰回りを包んでおけばよかったので、こうしてちゃんとしたズボンを履くとなんだか「お出かけをするぞ」という気分になってくる。お出かけと言っても徒歩20分の小さなイタリアンレストランだけど……。

恋人はしっかり化粧をしていた。

「これでもいくつかの工程を省いたんだから」

恋人が化粧をしている間に私はブログを書き、紅茶を一杯飲み、顔を洗って髪型を整え、着替えた。その省いたいくつかの工程(工数)が含まれる場合、出発は一体いつになっていたことだろう。

「久しぶりのお出かけ感」そう言う恋人のアイシャドーは春色に弾む。

恋人はお化粧が好きだ。お化粧が好きな恋人が私は好きだ。うまく言葉にできないけど、楽しそうに悩みながらその日のメイクを考えて、ばっちりお化粧をした恋人を見ると、彼女なりの「誇り」を感じられるのだ。

12時ごろ、私たちは家を出た。

 

 

初めて行くレストランの多くがそうであるように、私たちの行ったイタリアンも「へぇ、こんなところにあったんだ」というところに店を構えていた。タイ古式マッサージや部品屋や学習塾や正体不明の飲み屋の入っているビルの2階。広くないが狭くもない。

 

「ピザは家では作れないから食べたいな」

「トマトソースは家で作れるから他のがいいな」

フェットチーネ、家では無理だからいいね」

「アーリオ・オーリオは俺のほうが上手く作れるからな」

「クリーム系ぜんぜんやらないよね」

「そのうちタラコとかでやりたいんだよね」

いつの間にか私たちは「何を食べたいか」よりも「家で再現不可能なものを食べたい」という基準で食事を選ぶようになっていた。

メニューを見ながら「これはなんとなく想像で作れる気がする」などと作ってもないのに言ってみたりする。

生活が変ると思考も変わるのだ。

結局、アンチョビのピッツァとアオサ海苔のクリームスパゲティを注文した。私は白ワインも注文した。昼間から飲む酒がこの世で一番美味いことを知っている。

 

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美味しかった。

 

外食もいいものだ。

自分たちで作る料理もおいしいし、満たされるものだけど、外食には外食でしか満たせないものがある。もちろんそれはお腹のことじゃなくて、精神的な部分の話。

外食に払うお金はただの食事代ではなくて、材料費や光熱費やサービス料や食器を洗わなくてもいい気楽さや、豊かな時間を過ごせるという、その価値に払っているのだなぁ。