先日、マリオ64(マリオ3Dコレクション版)を120枚完全クリアした。
クリアしたのだけど、私はひとつ嘘をついていた。
実は、「かざんのリフトツア~」というコースだけ、自力でクリアしていなかったのだ。
恋人がクリアしてしまったのだ。
当時私は「かざんの リフトツア~」(のばしが「~」なのがポイント)に大苦戦していた。少なく見積もってもたぶん15回以上死んだ。
はっきり言って、挫折。こいつのおかげで64とはすこし距離を置くようになってしまったくらいだった。もういっかこのゲーム。いいわもう、と腐った気持ちになってしまった。
そんなさなか、恋人がこのコースをクリアした。何回かトライして、2回ほどゲームオーバーになったけど、辛くもクリアしたというのだ。
ここを突破してくれたことで私はゲームの先へ進む決心をしたのだけど、しかしながら心中は嬉しくも複雑であった。
それから真面目に取り組むようになって、数日後なんとか120枚を制覇した。
いや、正確には119枚だ。
なぜなら、「かざんの リフトツア~」だけ恋人がクリアしたのだから。
なんとなくモヤモヤした気持ちでゲームクリアしてしまった。
だけどもう一回あのコースをやりたいかと問われると……私は素直に頷けなかった。それだけ苦戦したコースだったのだ。
まぁいいか。たかがゲームじゃないか。そうやってお茶を濁すことにした。
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だが恋人は、私が甘んじるのを許さなかった。
「かざんのリフトツア~はクリアしてないよね」「ずっと119枚のままだね」「あれだけ私が獲ったんだ。気持ちよかった」恋人はそう言って、事あるごとに私の精神に圧迫を加えた。
「いや実際、ほぼ初心者でよくできたよあれ」恋人は鼻にかけて言う。
「119枚で『完全制覇』か……」
ほとんど「かざんの リフトツア~」ハラスメントと言ってもよかった。
恋人は不貞腐れる私を愉しんでいたようだ。
「全クリとは言えないよね」
しかし、そうなのだ。彼女のおっしゃる通りだ。
私は完全制覇したわけではない。
データ上はそうであっても、精神上、ずっとクリアできていないのだ。
これでいいのか?
いいわけがない。
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因縁の舞台に立つ。
ああ、一体何度マリオの尻に火がついて死んだことか。右足の先がマグマに浸っていても死なないくせに、尻が当たると死ぬのだ。どんな判定基準だ。
コースを選択する。
「かざんのパワースター」っと……
じゃなくて、もう一個あとのやつ
「かざんの リフトツア~」
久々に触れるマリオだが、操作感は手に馴染んでいる。
すいすいと動かせる。
今は「マリオサンシャイン」をやっていて、それと比べると64がいかに操作性に難があるかわかる。着実に、落ち着いてやることが肝要だ。
でもこれはこれで味があるというか、これこそが魅力でもあるよなぁ、と思い入れの深いゲームなだけにすっかり洗脳されている。
「リフト」と俗に呼ばれている長方形に乗り、目的地を目指す。
下は全部マグマだ。落ちたら死ぬに決まっている。即死しないマリオはそれだけで十分称賛に値する。
リフトで登ったら、棒にしがみついて上を目指す。
たったこれだけの一体なにがそんなに難しいのか、言葉でうまく説明できないのだけど、回転する炎や棒までの距離・タイミングが絶妙で、うまく合わせないとマリオが自由落下してマグマに呑まれてしまうのだ。
現に上の写真を撮るまでの間にいつの間にか3回死んでいる。
「レインボークルーズやチックタックロックの100枚コインをクリアしたおれなら、このくらいできる」
そう自分を元気づけながら挑む。
しかしわりにすぐに死んでしまう。
「かざんの リフトツア~」はまごうことなき、前半ステージの難関コースだとおもう。
なんとか棒を越えて、浮島に辿り着いた。奥に見える青いやつがスターだ。
あと少しに見えるけれど油断大敵。わずかでもカメラ操作を怠るとマリオは簡単に滑落死する。なんて手間のかかる生き物だろう。絶滅危惧種かこいつ。
よし!!!!
クリアーーーーーー!!!!!!!!!
さすがに全制覇したあとなら、そこまで苦戦はしなかったけど、難しいことは再認識した。
これで、完全制覇。
心理的にも制覇した。もうなんの未練もない。
ふぅ~~~~~~~やれやれ。
あ~~~~~~楽しいけどつらいゲームだった。ときどき修行みたいなことがあったし、精神崩壊させられることもあった。
でもこれで、完全に、クリア。
もう大丈夫。胸張れる。
ようやく解放された。そういうかんじ。清々しい気分だ。
かくして私はコンプレックスを克服し、マリオ64を正式に、完全にクリアしたのであった。
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もう一周やろうかな、と最近思ってる。