蟻は今日も迷路を作って

くだくだ考えては出口のない迷路に陥っている

パンケーキを食べたよ

しぶりにパンケーキを食べた。

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やっぱりいいな~

 

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可愛いくて美味しいってすごい食べ物だ。

 

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「大地」とおもった。

 

 

パンケーキが提供されるや、私は「こういうときどうするんだっけ」としばらくこれを前に硬直した。

そうだ、まずは挨拶しなきゃいけない。ファースト・セッションが必要なのだった。

マスクを外し頭を垂れて鼻先をパンケーキに近付けて肺いっぱいに芳ばしく甘い香りを吸い込んでいたところ、恋人にガチめのトーンで「やめなさい」と言われた。

「ファースト・セッションだよ」と言ったが、本当に睨んできたので私は口を閉じた。

私たちの席がレジに一番近い席だったことも彼女の不機嫌の原因かもしれない。

 

写真撮影し(これも愛でる行為のひとつだ)、ナイフとフォークをかまえる。さて。さてさてさて。こういうときってなんか一句捻った方がいいんだったけ。そんな礼儀はないんだっけ。じゃあ、いいですかね。いただいていいんですかね。いただきますよ?いただきますよ!!!

いただきます。

 

そして気付いた時には食べ終わっていた。

 

いつもこうだ。パンケーキを食べ物だと認識する頃にはすべてが終わっている。

私はパンケーキを前にすると我を忘れてがっついてしまい、自分でも気付かないうちに食べ終わってしまうのだ。

残り四分の1ほどにさしかかったとき、私は一瞬意識を取り戻して「おれを止めてくれ!!!!!!!」と叫んだ気がしたが、どうやら誰も止めてくれなかったみたいだ。ナイフとフォークが一糸乱れず的確なリズムで私の口にパンケーキを運ぶ。

目の前にはメープルシロップのしみこんだパンケーキのかすかな残骸だけが、所在なさげに皿の上に浮かんでいた。

「後頭部に銃口を突き付けられて『急いで食べないと殺す』って脅されてるみたいな食べ方してたね」恋人はイチゴを口に運びながら言う。彼女の皿にはまだ半分パンケーキが残っている。

「命がけでパンケーキを食べる男」

 

そうだよ。

毎回、今日で最後かもしれないって思いで食べてるんだ。

 

それが礼儀だから。