蟻は今日も迷路を作って

くだくだ考えては出口のない迷路に陥っている

あなたの話を聞かせて

の好きなものの話を聞くのが好きだ。

推しでもコンテンツでも、あなたの好きなものについて熱く語ってほしい。

最初は恥ずかしそうに語りはじめ、次第に熱を帯び、早口になって、感極まって泣きそうになったりもしくはずっとニコニコしていたり、まるで恋人の惚気話をするように、あるいは自慢の我が子の話をする親のように、そんなふうに夢中になって好きなものの話をする人が好きだ。

 

とくに自分とは接点のないコンテンツの話をしてほしい。

アイドルとか、数学とか、天体とか、植物とか、ゲームとか、自分からは手を伸ばすことのないコンテンツがいい。へんに自分も知っていると物言いをしたくなる可能性がある。

そのもののどこが素晴らしいのか分析的に話してくれても面白いが、それに加えてあなた自身がそれに対してどんなエピソードを持っているか、それと接するときどういう感情になるか、どういったきっかけがあったのか、そんな個人的な話も交えてくれると嬉しい。

私はそれを聞きながら酒を飲んでいたい。

4~5分の話じゃなくて、プレゼンするつもりで4~50分話してほしい。

飲み会とかで結構酔っちゃった人がうだうだ喋りはじめちゃうことあるけど、あの時間結構好きで、自分も酔ってることもあって感情が大きくなって泣きそうになる。

論理的に、説得するように話す必要なんてなくて、ただあなたの語りたいように、好きなだけ好きな話を感情のおもむくままに言葉にすればいい。衒学的でいい。喋りたいだけ喋って、疲れたら眠ればいい。

好きな音楽の話だったらそれ聴きながら語ってほしい。好きな部分に差し掛かったら話を中断して音楽に耳を澄ませて「あ~、ここの歌詞……いい……」なんて遠い目をしてほしい。

アニメやドラマでも同じ。「ここ……いいの……」とホレボレしてほしい。

 

 

心の底から好きなものがあるって素晴らしいことだと思う。

好きなものにはパワーがあって、それがその人を突き動かしていて、ニコニコ話しているのを見ると聞いてるこちらまでその溢れるパワーを授かって胸がいっぱいになるのだ。

好きという気持ちに論理は無く、その感情に偽りはない。

それが好きであるということが自分であるということなのだ。

村上春樹が「自己紹介文を書くとしたらどのように書くか」と問われたときに「僕だったらカキフライの話を書く」と述べていた。

自分の好きなものについて書けば、それは自ずと自分自身について書くことになる。あとは素直に文章にできるかそれだけだ、と(いうようなことをどこかで語っていた)。

私は誰かの話を聞いてその人に思いを馳せたい。

 

 

好きなものにはパワーがある。

そのコンテンツが持っている波長と自分が合うことでパワーを得られる。心の栄養みたいに内側から湧いてくる。

それはコンテンツからパワーを得ていると同時に、あなたがそれを好きになることによってコンテンツ自体にもパワーを与えて、より魅力を引き出しているそんな側面もある。

 

好きなものに誇りを持つことは自分を愛することでもあって、好きなものに夢中になれる人はまったく愛しく尊い存在だ。

 

好きなものを語るだけ、聞くだけの飲み会をしたい。