彼女がまつ毛パーマをあてている間に本屋をウロウロしていた。
本には大別して3種類ある。
読んだ本、これから読みたい本、読みたいのに読めない本だ。
さいきん「いずれ読むことになるのだから今のうちに買っておいても問題はない」と思うようになって、本屋に行くと躊躇なく、気になったら買うようになってしまった。社会人の財力にものを言わせている。
ただ今日は、この後も街をウロウロする予定があったので、本は買わずにおいた。
まつ毛パーマが終わって、街を移動し、恵比寿(ゑびす)の店に鶏飯を食べに行った。
この鶏飯は1000円でライスがおかわりし放題(もちろん良識の範囲だ)だし店員の雰囲気も良く、気に入っている店だ。
チキンベースの澄んだスープが、塩分を失った夏の身体に染み込む。
蒸し鶏にチリソースをかけてパクチーをのせ、鶏のエキスで炊いたタイ米と一緒に食べれば気分はシンガポールだ。無論、シンガポールには行ったことがない。
パクチー苦手な人は多いけど、こういう異国の料理ってその土地の癖のある調味料とか野菜を入れた方がライブ感が増すので、なんか知らないスパイスとかあってもとりあえず入れてみることにしている。パクチーはたしかに小学校の校舎の隅に生えてた雑草みたいなニオイがするけど(みんなも一度は食べたことありますよね?)やはり一緒に食べた方が料理の解像度がぐっと上がるので、積極的に食べるといいだろう。あの臭さが快楽に変わる。
そのあと渋谷に行き、包丁を買った。
我が家の包丁はまったく鈍(なまく)らで、トマトなんて切れないのだ。
セールをやっていると聞きつけ、それを機に良い包丁を買った。
多種多様な包丁や調理器具があって、どれも手にしてみると瞬時に馴染む感じがあり、これ使えばプロの味になるかも、と思わせる説得力が道具の細部やなめらかな刃の仕事に見て取れる。
いくつか試させてもらい、値段的にも使い勝手的にも良さそうなものを一丁購入した。
(家に帰ってから野菜を切ってみると、まぁこれが、おもしろいように切れる。恋人が「なんでも切りたい」と言って私を見ていた)
包丁を買った後は表参道へ移動し、POOLさんの個展(SIBLING)に行ってきた。
いま最も注目している芸術家の一人だ。
顔のない群像を描いた作品には不気味さと、それを覆いつくすほどの温かさと安らぎを覚える。
色調とか、光りかたとか、影のかたちとか、丸さが優しい。
— POOL (@tasteoftest) 2021年7月15日
これからもっともっと活躍するだろう芸術家だ。
こういう推しの芸術家がひとりでもいるということは幸せなことだ。