蟻は今日も迷路を作って

真面目な話からそうでない話まで。本当の話から嘘の話まで。蟻迷路(ありめいろ)という人が書いてます。

最近無かった「ちょっといいこと」/ポイントカード・ラビリンス/最近あった「ちょっといいこと」

今週のお題「最近あったちょっといいこと」

 

ぶんあった。最近あったちょっといいこと。

たぶん、ちょっといいことあったはず、なのだけどうまく思い出せないのは、26年も生きていれば「はは、得したわ」程度の幸せなんて記憶容量にとどめておけるほど感動をもたらさず、その幸せから別の物事へ視線が移ったらすぐにも忘れられてしまうからだ。

寒いね。なんて寒くて寂しい人生だろう。

こういうときは『人間失格』とか『苦役列車』を読んで元気を貰うのに限る。陰惨で最悪で関わり合いたくないような人生に触れると逆説的にパワーがみなぎってくるんだ。自分とは関係のない人生を追体験できるのが小説の良いところだよ。

本は良い。個人的で、時間の流れを楽しめて、文字を追う快楽が伴う。

「ちょっといいこと」が全然思い出せないので、このテーマはなかったことにして次の段落から別の話します。

 

☆☆☆

 

本屋のポイントカードを毎回作ろうとして失敗している。hontoカードというマルゼンとかで使えるやつだ。

レジで「ポイントカードはありますか?」と訊ねられるたびに「ああ、今回もおれはカードを登録し忘れた」と額に手を当てて首を振り、「申し訳ありませんが、新しいカードを貰えますでしょうか?」と店員に伝える屈辱よ。

このカードは会員登録が必要で、カード受け取り後にサイトで会員登録を済ませてカードと紐づけなければ使えない。

私はカード受け取り後、帰宅してからカードを貰ったことを毎回のように失念して紛失、または「めんどくせぇな~~~」とイライラしてこれを窓外に放擲するなどしてやはり手放してしまうので、ずっとずっとポイントカードを登録できないでいたし、レジで差し出すこともかなわなかったのである。

これまで無駄にしてきたポイントがあれば辞書の一房くらい買えたはずである。その辞書を使って私は言葉を自在に操り、おもしろいブログをしたためられたはずだったのだ。これは私の損でもあり、読者の皆さんの損でもある。それを思うと奥歯に血が滲むようだ。

 

今回こそは、と新しいカードを受け取って、帰宅即、会員登録をすすめた。

しかし、なぜかうまくいかなくて、システムによって弾かれる。

メールアドレスを入れると「すでに登録済みです」みたいなメッセージが出てくるのだ。そんなわけないではないか。

どこのシステム会社が運営しているんだ、このグズノロサーバーめ、誰かおれのメアドを不正利用してやがるのかこの野郎、と怒ってカードを窓外に放擲する前に、メールボックスでhontoからのメールを確認してみる。往々にして私の落ち度であるパターンが26年の経験上多いと知っている。

するとたしかにhontoからメールが来ているではないか(26年の経験が物を言った)。

会員メールはすべて「迷惑メールボックス」に入ってるところから顧みるに、私は昔に会員登録をして、即、煩わしくて迷惑メールに登録したのだろう。

それで思い出したが、私はカードではなくhontoアプリをインストールしていた。

iPhoneのホーム画面を遡っていくと「使わない」とひとまとめにされたアプリたちの中に、hontoアプリがいた。

 

私は自分でも忘れたうちに、会員登録を済ませていたのである。

システムは正しかった。

 

なんだ、それじゃあこれからはカードを使わなくてもアプリを提示すればポイントが貯まるじゃないか、と一安心。過去の私、やるじゃんか♪ と良い気になったのも束の間、今度はアプリにログインができない。

正味、ここからが大変だった。

私はこういったポイントアプリ系の会員情報を登録して13秒後に忘れてしまうので、一度登録したが最後、二度とログインができない宿命なのだ。フザケてぜんぜん知らん人の名前や経歴で登録しているものもあるのでたまに知らない名義でお得情報がメールで来たりする。

自分でもなにかの病気、あるいはグレーゾーンなのではないかと疑ってる。

思い当たるパスコードを入れるがどれもだめだった。むだにセキュリティ意識が高い。自分でも思いつけないパスワードを設定するな。

数回の失敗でアカウントが「ロック」されたらしく、なにを打ち込んでも管理画面は梨のつぶてになってしまった。

「パスワードを忘れた場合」から再送メールを送ってもらおうとしたが、これもシステムエラーなのか、いっこうにメールが届かず(もちろん迷惑メールボックスにも来ない)いよいよダメそうだった。

私は永遠にhontoカードを使えないのだ。

カルマ。これは前世からの業(カルマ)なのだきっと。

ははは。ポイントがなんだ。くだらない。そんなものに固執する人間は貧しいに違いない。そうに違いない。

半ばやけくそになって、滲んだ目で最後の頼みとアプリのメモ帳を遡った。

会員登録時、機嫌が良ければIDとPWをメモしている可能性がある。

はたして、それは、あった。

 

考古学的な発掘により「発見」されたIDとPWを打ち込むとそれまでかたく閉ざされていたログイン画面が観音開きで私を迎え入れ、苦戦3時間、ようやくホーム画面までたどり着くことができた。

バーコードが煌々と表示される。レジでこれを見せればポイントカードと同じ扱いになる。累積ポイントを見てみると当然「0pt」。

でもいい。これから私はここに貯まっていくポイントと共に生きていけるのだから。人生はまだ始まったばかりなのだから。

 

これが最近あった「ちょっといいこと」かな。