蟻は今日も迷路を作って

真面目な話からそうでない話まで。本当の話から嘘の話まで。蟻迷路(ありめいろ)という人が書いてます。

目黒寄生虫館へ行こう

黒にある寄生虫館という施設に行ってきました。

これはなにかというと、目黒という場所にある、寄生虫を展示している、博物館です。

GWに実家に帰省できていないその罪滅ぼしのつもりで一人行ってきました。帰省虫ってか。

 

www.kiseichu.org

 

天気晴れ、風やや強し。

道中、目黒川から猛烈なドブのにおいがして春を感じますね。気温が高くなると水温も上昇して細菌が繁殖し、あたり一帯が腐敗臭にまみれます。「どぶ臭し」は春の季語でもあります。

橋から見下ろすとどす黒い水が流れているのが見えました。流れているというかどちらかと言えば淀んでいると言った方が正しいような川で、生物の気配はなく、いたとしてもきっと中国産の目が溶けてる巨大魚とか誰かが放流したアリゲーター・ガーくらいのものでしょう。

目黒通りを歩くこと10分、角地にひょっこりと博物館は現れました。

この博物館は郵便局の支店くらいの小規模な施設で、入館料が無料なのは魅力のひとつでもあります(寄付もできます)。

なぜ無料なのかわかりませんが、写真を見てみると公益財団法人と書いてあるのでたぶんそのおかげなのでしょう。これからは公益財団法人の施設を回って休日を過ごしたいと思います。

この写真を撮っていたところ、中から中学生風の男子三人がケラケラ笑いながら出てきました。

「・・・・・・っ!」

「・・・wwww!!」

「ってよぉ・・・・・・っしょ!w」

ちいかわの会話?

コソコソ笑っていていまいち何を話しているのかは判然としませんでしたが、その態度がなにか怪訝に思えたのは、すなわちここが「寄生虫館」だからであり、あまり茶化したりふざけたりするような雰囲気のスポットではなく、英国風テーブルセットの展示がされているのならともかく、身の毛もよだつような寄生虫が展示されている施設から出て来てケタケタ笑っているのは「正しくない態度」に映ったし、ヨシ寄生虫を見まくってやるゾとある程度の覚悟をもって臨んできている身からすれば、彼らのコソ笑いとふにゃふにゃした態度は雰囲気をぶち壊していたのです。一文が長くてブチギレてるみたいになってる。こわ。

しかしまぁ、26歳男性が中二の会話に聞き耳を立てているのも不審そのもの。自己嫌悪も募ってきたところで早速入館しましょう。

入り口は階段になっているので足の悪い方には不便かもしれません。

中はホルマリン漬けの検体や寄生虫がズラリ。

写真撮影もOKです。熱心なご婦人がスマホでしきりに寄生虫を収めていましたが、いくら撮影OKとはいえ逐一撮っていると展示を見たい人の邪魔にもなるし、だいたい、フォルダをそんなに寄生虫いっぱいにしてどうするつもりなのか、それもスーパーにでもいそうなご婦人がとなると、寄生虫よりも好奇の目で見られることになります。罪ではないですが、ほどほどにした方が良いでしょう。罪ではありませんが。

 

2階建てにわたる展示のうち、1階のスペースでは寄生虫の多様性や、そもそも「寄生」とはなんなのか、「寄生虫」とはなんなのかを体系的に学べます。

寄生虫はそこらじゅうにいるらしく、種類も昆虫っぽいものから蠕虫(ぜんちゅう)みたいなもの、なににも見えない形態のものという風にさまざまで、じつにバリエーションに富んでいるのだとまず驚きます。

「人間に寄生するものもありますが、すべてに害があるわけではありません」

とパネルに書かれつつも、人体をかたどった展示では「肝臓には肝吸虫!小腸には回虫!ノミ!シラミ!」と容赦ありません。

お魚にも寄生虫はいて、アニサキスなんてのはよく知られています。

アニサキスの特性」として事細かに書かれています。

「60℃以上で熱すること」「魚をさばいた包丁などはかならず洗うこと。まな板をわけること」などなど。

ここでうる覚えの知識を書いてしまっても仕方が無いので詳しくは調べるか足を運んでみてください。私は刺身を食べる気が失せました。

 

2階の展示スペースでは人体に害を及ぼす寄生虫が紹介されています。

寄生虫に蝕まれることで人体が変形したり大変な思いをしたり、最悪死に至ることもあります(死とはあくまで最悪の「結果」であり、そこに至る「過程」は死よりも酷であります)。

Wikipediaで読みごたえがあることで有名な日本住血吸虫も展示されていました。

件の寄生虫も、発端となったミヤイリガイも展示されていました。こんな小さな虫が風土病を巻き起こし人を殺していたなんて。はなはだ恐ろしい。

 

ja.wikipedia.org

 

などと震えていると、その後ろの展示では体長8メートルのサナダムシの標本が。

「ある日肛門から白いヒモ状のものが出ているのに気づいた。博士の指示で虫下しを飲んだところ、この8メートルあまりの寄生虫が出てきました」と解説。出てきました、じゃねぇだろ。

8メートルというと、どのくらいの大きさでしょうか。くじらのペニスよりも大きいことは間違いないでしょう。山手線の一車両よりかは短いくらいでしょうか。規格外に大きすぎて、目の前にしても漠然としています。

「体節は3000以上ある」と解説。

でしょうね。

このサナダムシは特に人目を惹いていました。ツーショットを撮る婦女もいました。

 

ひととおり見て回っておおよそ30分くらいでしょうか。小さい展示です。しかし、どれも興味深く面白かったです。

ミクロの世界に広がる寄生虫の多様性に、生命の強さを感じました。寄生虫と一言に言ってもさまざまな種類がいて、彼らは必死に生きているのです。うまく寄生できなければその先にあるのは死、他力本願・運任せの生き方にも見えますがそれはそれなりにかなりツラいものもあるでしょう。寄生され奇病にかかった者はたまったもんじゃありませんが。

じつに豊かな広がりを見せる寄生虫の世界にひとたび興味を持てば標本もさほどグロテスクには見えませんでした。(個人の感想です)

 

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ところで、どうせ人なんてほとんどいないだろ、とタカをククって昼頃に訪ねたのですが、先ほどの中二や写真婦人のように、老若男女問わず人が訪れけっこう混んでいました。

ファミリーが5組くらい来ていて、男の子も女の子もお父さんもお母さんも時に熱心に、時に顔をしかめてホルマリン漬けを見ていました。なぜファミリーで来たのか。

カップルの比率も高かったです。どちらかというと女性の方がはしゃいでる様子で、男性はムム……と唸ったり首を横に振ったりして、特に肥大化した陰嚢の写真の前では顔を青くしていました。米俵くらいになった金玉を見れば男性は誰だってそうなります。

それにしてもどうしたカップルなのでしょうか。デートに行き尽くしたのでしょうか。

若い女性のお友だち同士もいました。フォトスポットと勘違いしているのでしょうか。

 

怖いもの見たさのアトラクション的要素として訪れるには、そこまで大きい施設でもないし、展示内容もポップなものもありつつ主体は真面目なので、たとえば「人体の不思議展」みたいなものを想像しているのなら期待外れかもしれません。

ただ、どういった理由であれ行ってみればそれなりに発見があり、教養になります。

日本には寄生虫と戦ってきた歴史があり、実績があり、犠牲があります。それを知るいい機会になることでしょう。

まずは知ることから始めて、ひとりひとりの意識を変えることで被害を減らし、またそういった取り組みは生態系の保護にもつながっていくのです。害があるからってむやみに絶滅させればいいものでもないのです。

「この世界に意味のない生き物なんていない」と展示にも書いてありました。いい言葉です。我が家の標語にします。

 

目黒寄生虫館は、寄生虫とその歴史を知るいい機会になる場所でした。

せっかく無料ですから、お近くなら足を運んでみるといいでしょう。

 

 

目黒寄生虫博物館のポイント

・入館料無料(寄付できます)

・写真撮影OK

・意外と混んでた(平日はそうでもないかも)

・けっこうタメになった

 

(JR目黒駅から徒歩10分程度)

 

 

<おまけ>

帰ってからミートソース・スパゲティを作りました。

大腸にびっしりと寄生した線虫を思い出しましたが、美味しくできたのでよかったです。