ステーキ肉を焼くのは、初めていくスーパーのセルフレジを使うよりも、簡単だ。
妻がいない夜、私はファミレスなんぞに外食に出かけるよりも、安価なステーキ肉を買って焼くほうを選ぶ。
サイゼならまだしも、普通のファミレスって意外とお金がかかるもんだ。それなら簡単にできて、ファミレスよりも安く済んで、家でリラックスできるステーキを焼いた方がずっといい。家にはファミレスみたいにやかましい人たちもいなければ、猫型配膳ロボもいない。家にも猫型配膳ロボはいてもいい。
妻がいるときにも肉を焼けばいいけど、2人前となるとステーキ肉は高くつくので、なかなか2人のときには食べない。だいたい、肉に食らいつくには1人の方が気持ちを包み隠さなくて済むというものだ。
肉を焼き、食べるというのは、内省的行為なのだ。
ステーキを焼く際、付け合わせにマッシュポテトを作ることにしている。
なんとなく、ステーキには米よりもポテトのほうが合う気がするからだ。
余力があればニンジンを甘く煮るやつもやるけど、余力がなければ細切りにして電子レンジでチンして付け合わせとする。茹でるよりもチンした方が栄養素が逃げないからいい、と自分に言い聞かせて。
ステーキソースも余力があれば作る。玉ねぎをすりおろして、酒や醤油なんかと合わせて、フライパンで火を通す。余力がなければ出来合いのステーキソースを買って使う。自分で作ったものと同じ味がするので、どっちだっていい。買うことすら面倒くさかったら、醤油とニンニクを混ぜて火を通せばそれでいい気もしている。どうせ自分しか食べないのだからなんだっていいのだ。
肉を焼く時間は、実は裏表であわせて3分もない。
強火で一気に焼くと、じゃあああああっと水分のはじける音がして、煙がまうまう出て、なんていうか実に痛々しい光景だと毎回思う。
(手を今このフライパンに置いたら、ステーキもろとも爛れちまうんだろうナ)
ドキドキしながらそんなことを考えていると、ステーキなんてあっという間に焼き上がる。
肉をアルミホイルにつつんでしばし時間を置く。余熱で火を通すらしい。肉をそっとくるんで台所に放置し、物陰から見守る。
ところで余熱と予熱は同音異義で、意味はまったく違うのに使う頻度は同じくらいなので非常にややこしい言葉だ。一度この件で妻と喧嘩になりかけたこともある。チルドのピザをオーブンで焼く際に、ついお互いに語気が強くなってしまった。
便利になったと思える現代でも、こんなところに不便が見つかるものだ。
なんてことを考えている間に、余熱は終わる。
ステーキで時間がかかるのは付け合わせの準備くらいで、肉を焼く本編はすぐに終わってしまう。
あとはもう食べるだけ。
おうちステーキはコスパも満足度も高くて、自分にちょっとしたご褒美をあげたいときにはよくやっている。
なによりも肉を焼くのはとても楽しい。
考え方が捗るからね。
今日はステーキの写真は無い。
かわりに、美味しかった小倉トーストの写真を載せて、皆さんの情緒をめちゃくちゃにしたいと思う。