YouTubeで見れない著作権フリーのショート・ムービー『ブルース・ブルースト・ブルーセル』を見た。
27分ほどなので休み時間にサクッと鑑賞できた。
1912年のスペイン映画である。
白黒だし、映像はかなり粗いし、音楽はあるもののセリフの音声はなく、セリフはカットに挟み込まれるかたちで字幕で少し出てくるのだが、日本語訳されていないので内容はよくわからない。
ただ、字幕の内容はよくわからなくとも、映像の面白さだけで見ていられるし、筋はおおむね理解できるもんだ。
昔の映画はサイレントが前提としてあるので、表現技法としては動作や表情に頼らざるをえず、せいぜい音楽がその場の雰囲気を醸し出すにとどまっている。だから、サイレントに関しての表現力が豊かで、最も純粋に映像の面白さを味わえるのが当時の白黒サイレント映画なのだと、今回鑑賞して胸を打ったことだ。
言葉がなくても面白い例は『トムとジェリー』やチャップリンなどでも証明されている。これらは今見ても面白くて、笑えて、時には感心すらさせられるものだ。
言葉に頼らないからこそ、どの世界でも通用するし、どの時代でも理解できる、普遍的な面白さを追求しているのである。
さて、この長ったらしいタイトルの映画『ブルース・ブルースト・ブルーセル』は、要するに兄弟が一人の女を奪い合う、といういかにもよくありそうな内容だった。
長男のブルース、次男のブルースト、三男のブルーセルが、幼馴染のフローレン(たぶんそう読む)を狙ってそれぞれのやり方でアプローチをかける。
三兄弟でぜんぜん性格が違って、片やロマンチックに楽団を率いてフィドルを弾いたかと思えば、一人はマタドールとなって闘牛で男を見せ、もう一人は特別な宝石を持ってきてキラキラと光らせては魅了しようとする。
しかし、もうお分かりのとおり、三兄弟ともあらゆる手を尽くして、失敗してしまう。
この失敗の部分に、三兄弟が血の通った家族であることが見て取れるのだ。三人ともあとひと押しなにかが足りない。
足りないのはつまり愛、なんてスペイン映画らしいロマンスなのだけど、なぜ三人に愛が足りなかったのだろう?
それは彼らが幼馴染を手に入れたい理由にあり、争う理由にあった。
結局のところ「このろくでもない兄弟にだけは絶対に負けたくない」という意地である。
兄弟でも兄妹でも姉妹でもなんでも、上か下に自分と似た存在を持つ人ならば誰しもが似たような思いに囚われたことがあるはずだ。とくに歳が近ければ近いほど、あるかもしれない。
無駄に争っては無為に終わる。兄弟とは愚かなものである。
でも、最後に支え合うのもまた、家族である兄弟なのだ。
この映画の最後でもそう見せている。
失敗、と言ってもコミカルなものだし、ふつうにちょっと笑えて面白い。
最後は、やれやれって終わり方をするのだけど、三人の後ろ姿が印象的なのでぜひ、実際に鑑賞して確かめてほしい。
まぁもっとも、こんな映画は存在しないので、確認できればの話にはなるが……。