蟻は今日も迷路を作って

くだくだ考えては出口のない迷路に陥っている

やなモン見ちまった

業をしていると、オフィスの隅の打ち合わせ場所で(打ち合わせ場所とは言い条、区切られてたり衝立があるわけではなく、テーブルと椅子が置いてあるだけだ)、上司と同僚が揉めていた。

揉めていたというか、私より1ヶ月だけ先に入った同僚が、上司の質問攻めにあい、詰められていたのだ。

吠えられたり大声を出されたり机を叩かれたりそういうことはないのだけど、まぁそれなりに、「一体どういうことなのあなたの仕事は……!」って詰め寄られている。

私はそれを聞き耳立てながら仕事を続けた。

上司が以前にも指摘し、修正のアイデアを出し、そもそもこの作業にどういった意味があるのか、何を目的としてやっていけばいいのかを再三にわたり説明し、長く残業をしてまで解説をした物事を、そのときは同僚も納得した様子で答えていたようで上司も安心したみたいだったが、いざ後日になって成果物を見てみたら、説明したことがまったく反映されていなかったらしい。

トライアンドエラーなんてレベルではなく、エラー、エラー、エラー。

上司は空っぽの井戸に石を投げ続けているような感覚だろう。

上司は、もう散々ずっと説明してきたじゃないか。私の時間はなんだったんだ?と最後は怒る気力も失ってヘナヘナと首を垂れていた。

たしかに同僚は、日頃の様子を見ていても愚鈍極まりない。同じことを何度か指摘しても直っていないし、その場ではいい返事をしていても、まったく学んでない。頭をうまく使えていないのだろう。

同い年なのにもう4回転職していて、なんとなく察するところがある。それとこれとは別かもしれないが。

あるいは、なんらかの適応障害になっているのかもしれない。適応障害になると判断力や思考力が鈍り、思考できなくなるらしい。

私も人のことを言えるほど鋭く賢くないけれど、同僚はちょっと常軌を逸した鈍さである。そして一斗缶くらい神経が太い。

 

上司の気持ちはよくわかる。

なんらかのハラスメントに抵触しないように言葉選びに気をつけていたし、感情的になりすぎないように頑張って律していた。使えない部下を見捨てるわけにもいかないが、それでもお客様に納品するもののレベルは上げなければならず、なかなか厳しい職務だと思う。

最後はヘナヘナになり、頭の中だけ沸騰しているような足取りで自席に戻り、ほかの先輩に続きを託していた。

私はまだ仕事があったけれど、ちょっとあの空気の中続けられそうになかったので、残りは明日の自分に期待をして切り上げた。

やなモン見た。