蟻は今日も迷路を作って

くだくだ考えては出口のない迷路に陥っている

妻がいない週末の食事【※画像なし】

が出張と、週末に旅行していた関係で、木曜の夜から日曜の夜まで、私はアパートで1人で過ごした。

妻がいないと食事の楽しさが半減するため、なにを食べてもどう食べても楽しくないのだが、楽しくないなりに、自分の好きなものを食べようという気持ちが湧いてきた。

ずっとコンビニ飯でもいいし、カップ麺や牛丼を食べまくって糖質過多になるのもオツだろう。自堕落に走るのは簡単だ。

しかしせっかくなら「妻がいるときは食べられないもの」を作って食べたほうが、いつか死ぬときに「あの日はよかったなぁ」と思えるのではないか。

絶対にそうだ。

 

木曜の夜は牡蠣鍋にした。妻は牡蠣という素晴らしい貝が苦手なので、普段は食べられない。

仕事帰り、20時を回っていたがスーパーへ行くと牡蠣(加熱用)が400円程度で売っていた。これと豆腐(43円)を買う。白菜とネギは家にあるものを使う。

こういった鍋はまず昆布で出汁をとるのだが、昆布がないし、ついでにかつお節もないので、本だしをテキトーに入れる。気持ち少なめ。

酒もテキトーに入れる。酒の量は気分だが「ドヴォンドヴォンドヴォン」くらいで良しとされる。これを煮立たせる。

豆腐を9等分して土鍋に並べ、白菜、ネギを入れて再び煮立ったら、牡蠣を入れる。しめて7匹。これの過熱を怠ると大変なことになりそうなので、念入りに火を通した。

鍋を開けると牡蠣の香りがもやりと顔にかかって、幸せを直感した。

牡蠣の出汁が豆腐に染み込み、湯豆腐としても美味い。

ネギはともかく、白菜は不要だったかもしれない。少し水っぽくなった。

それにしても牡蠣。なんて美味しいのだろう。もはや芸術的ですらある。奥深く、底知れない海の味がギュッと詰まっていて、噛み締めるごとに波間の潮騒が口の中に凝縮される。食べる詩だ。

余った出汁でおじやを作り、木曜の夜を〆めた。木曜だけど日本酒も徳利についで飲んだ。

素晴らしい人生の幕開けのような、そんな平日の夜がこの世界にはあるのだ。

 

金曜の夜は冷凍の餃子(ニンニクマシ)を食べた。

それからニンニク入りの混ぜそばも。

こういったものを妻がいるときに食べるのは、ガリハラ(ガーリック・ハラスメント)になるので避けるようにしている。

言うまでもなくギルティ。金曜の夜はこうでなくちゃ。

 

土曜の夜は、豚レバーを買ってきて、レバカツを作った。

私はなんといってもレバーが大好物なのだが、妻はレバーを毛嫌いしており、そのせいか慢性的に鉄分が欠乏している様子である。

レバーはそんなに高くないし、レバニラとか大好物なのだけど家では普段作れない。

ここぞとばかりにレバーを買い、牛乳とウスターソースに漬け、パン粉をまぶしてカツレツに仕立てた。

千切りのたっぷりのキャベツにレバカツを並べ、カラシをつけて食べる。しっかり下味がついているからソースはいらない。

薄いレバーがざくりと切れる歯応えが最高ちょっと固めにできたのが嬉しい。

牛乳につけたおかげで臭みもない。

レバー特有の、舌に重くのしかかる旨味がたまらず、これにカラシがつんとして、いいアクセントになっている。

これを、札幌ラガー、通称赤星で流し込む。

幸せのほかに言葉がない。生きててよかった。

将来は豚レバーになりたい。

 

日曜の夜は迷ったが、500円で売られていた鯛を買ってきて、丸ごと焼いて食べた。

切れ目を入れて塩を振り、グリルにGO。以上だ。なにも難しくない。

焼き魚は皮目に脂が乗っていて最も美味だ。鯛を丸ごと1尾食べているというその状況が美味しさと嬉しさを加速させる。

本当はファミレスにでも行こうと思っていたけれど、鯛が500円なのを目にして、こちらのほうが経済と判断した。

だが、目利きのできない自分は、魚は食べてみるまでわからない。今回は勝ったが、次はわからない。ときどき酷い魚にあたることがある。大抵、半額セールになっている鮮度の落ちたものだ。

 

月曜以降の作り置きに、角煮を作った。6時間かかったが、1日時間をかけて料理をするというのもまた贅沢で楽しい。

充実した4日間だった。