蟻は今日も迷路を作って

くだくだ考えては出口のない迷路に陥っている

首をやった

  昨日の朝のことである。

 起きてその寒さに驚いた。寒すぎる。もう冬ではないか。そうか、もうすぐ12月だから寒くて当然だ。もう冬なんだなぁ馬鹿が、と寒さに悪態をつきつつ、のそのそ起き出して、顔を洗うことにした。

 湯で顔を洗っているときのことであった。それは突然のことだった。

 顔をゴシゴシ擦っていいたら、首の右側がピキッと鳴った。

 筋肉が断裂したかのような痛みが走った。

 「なになになになになになになに?????」と顔を上げ、濡れたまま痛みに顔を歪めている鏡の中の自分に問うた。答えはわからなかった。とにかく首に猛烈な痛みだった。

 「痛い痛い痛い痛い痛い!!!!!!」鏡の中の自分に伝えた。知ってる、そう言った。

 首が動かなくなった。

 

 タオルで顔を拭くときも少しでも動かすとギリギリ痛んだ。その痛さは寝違えによく似ていた。

 顔を洗っていて寝違えるだろうか?そんなわけはない。ぎっくり首という症状を聞いたことがある。それかもしれない。顔を洗っていただけで?そんなことなる?ジジイかよ。

 痛みと裏腹にちょっと滑稽であったが、笑っている余裕はなかった。

 

 痛めてから一時間くらいは首を全然動かせなかったのだが、アンメルツみたいな塗り薬を塗ったらすこし首を回せるようになった。首だけ石像化したかのようだった。

 これは筋肉の痛みなのだろうか?筋肉の痛みであればそのうち治ると思われるので良いけど(良くはない)、これが神経のものだったら大変なことになる。

 首の神経を傷めて無事であるわけがない。顔を洗っていて首の神経を傷め、半身不随、なんて仰天ニュースものだ。

 怖くなってGoogleで調べたが、洗顔して首を傷めたなんて人も記事もまったくない。世界最初の症例かもしれない。ぜんぜん嬉しくない。調べれば調べるほど恐ろしい病気がヒットする。首は神経や血管の集中する人間の急所である。

 私は死ぬのか?あっさり死ねたらまだ楽かもしれない。そんな恐ろしい病気がたくさん出てきた。

 

 症例の中から自己判断したところ、この痛みは筋肉性のものであると思われる。

 神経性のものであれば痺れがあり、首だけでなく頭や肩など広範囲に痛みが出るようであったが、私のは首だけである。筋肉が断裂したのだ。顔を洗っていて。ジジイかよ。

 おそらく、寒さで硬直した筋肉が突然動いたことでなんらかの損傷を受けたのだろう。弱すぎる。首を鍛えようと思った。

 とりあえずあまり首を動かさないようにして、抗炎症剤(バファリン)を服用した。

 

 今では、だいぶ良くなってきている。

 首の石像化の呪いはかなり解けてきている。だけど、まだ少し痛い。首を捻るのは大丈夫だけど、右に傾けるとやや痛む。

 もう少し様子を見ようと思う。数日しても痛むようであれば病院へ行こう。

 まったく、ジジイかよ。私はもうすぐ24歳になるのに。