腕を伸ばすと猫が近寄ってくるようになったのだが、近寄ってこないときもある。
猫にだって事情があるのだろうし、私自身そんなに魅力的な人間ではないので仕方がない。
入浴したあとと、リビングに入ったときに猫たちはすり寄ってくる。
尻尾を立てて脛のあたりをくるくるする。
入浴後にリビングのソファに腰掛けていると、足元にごろんと横になって、自分のにおいを擦りつけるように、あるいは風呂のにおいを全身で感じるように身体を寄せ付けてくる。なんだろう、この可愛い生き物は。
だけど、寄ってこないときは寄ってこない。
なにが違うのだろう。
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季節が変ってから、なんだか私の足が臭くなった。
毎年こんなに臭かったかしら、と思う。例年以上に足汗を掻き、すっぱいような腐った駄菓子のような、不愉快なにおいがする。
あぐらを組むとかすかにつ~んと臭う。どおりで最近夕食が不味いわけだ。卓袱台で食べるメシが不味い理由がわかった。ぜんぶ腐ったにおいがする。
水虫的なやつだろうか。
風呂に入ってよく洗っても、しばらくするとまた臭い。汗を掻いてスリッパが濡れている。
シンプルに年齢を重ねるとこういうことが起こるのだろうか?
シンプルにとても嫌だ。
ところで、足が臭いとき、猫は近づいて来ない。
我ながら「ちとニオイますな」と思うレベルのとき、猫は必ず寄ってこない。
猫避けになってるみたいだ。
早急に対策を練らねばならない。
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猫にマタタビを与えてみた。
一頭はマタタビのにおいを嗅いだだけでめろめろになってしまい、すぐその場で横になって、粉を舐めさせると全身で私の腕にしがみついたので、おかげで右腕がズタズタになってしまった。
もう一頭にマタタビを舐めさせたが、あまり効かないらしく、舐めるだけ舐めてツンと澄ましていた。
だがしばらくするとその足取りに「酩酊」が読み取れる動きをはじめ、わけのわからないタイミングで急にしゃがんだり、爪とぎをしながらゴロリと横になってしまったり、挙句には匍匐(ほふく)前進のようなことをした。
短い前足をズズイと前に繰り出し、後ろ足で床をよじ登るようにして前進するのだ。なんだそれ。どこで覚えたんだ。
一方最初に与えた一頭の方は錯乱し、自分の尻尾を甘噛みしたり、全身を舐めまわしたり、狂ったように肉球をしゃぶったりしていた。小さいゴミにも敏感になり、一粒落ちてた猫砂に驚いて逃げようとしたが、これもまた酩酊状態なので立ち上がることができず、即座に驚きを忘れたかのように寝ころんで、また肉球をしゃぶっていた。
薬物患者そのものだった。
2頭の猫はそれぞれの効きの中で私に纏わりつき、うにゃうにゃと弛緩しきって甘えてきた。
マタタビ偉大だ。すごいぞ。あげすぎないように気をつけよう。
ただ、それでも私の足に近付いた時は、ハッとして、一瞬尋常の表情に戻るのであった。
なんとかせなばならない。