蟻は今日も迷路を作って

くだくだ考えては出口のない迷路に陥っている

捨てる本、捨てない本、捨てられない本

 っ越しの荷づくりを進めている。

 Amazonで引っ越し用の段ボールを購入したのだが、想定していたよりも小さく、スーツやコートなどが入る大きさではなかった。

 どうしてサイズを確認して購入しなかったのか、そういうところがおれはダメなんだ、勢いだけで、値段だけみて決めてしまったのだ。

 ひとしきり自省したところで頭を切り替え、小さい段ボールには持って行く本やCDを詰めていった。

 すると、10箱のうち7箱が本で埋まってしまった。

 こんなに持って行ってどうするつもりなんだ、と訝しくなりつつ、しかしどうにも実家に置いて行く気にはなれなかった。

 

 本棚の本を一冊ずつ取り出しては検分し、必要か否かを判断した結果の7箱である。

「あー、この本はぜったいにもう一回読むだろうな。持って行こう」

「最近は読んでないけど、いままで3回読んだからまた読むだろう。持って行こう」

「あー、これおもしろかったけど内容忘れたな。持って行っとこう」

「これ読むの苦労したんだよね。もう一度読むとは思えないけど本棚にあると引き締まって見えるし持って行こう」

「大学の授業で使った本だ。二度と読み返すことはないだろうけど思い入れが深いから運命を共にしよう」

「半分しか読んでないから持って行こう」

「読んでないから持って行こう」

「表紙がきれいだな。持って行こう」

 と言った具合に、持って行く理由が多すぎてなかなか捨てていくことができない。

 

 逆にどういった本を置いて行くことにしたのか。

 ひとつは漫画だ。読みすぎてもう十分楽しんだとおもえる漫画は置いて行く。もちろん、えっちすぎて恋人には見せられないものも置いて行く。名残惜しい。

 それから図鑑、世界史の資料集などもう読むことがなく、また内容に更新が必要なもの。古いもの。

 雑誌、ムック。文芸雑誌は一部持って行くことにしたが、どうでもいいような雑誌については置いて、ムックは内容が軽いし表紙が下品なものが多いので捨てていくことにした。

 要するに幅を取る本を置いて行くことにしたのだが、それでも7箱に本が詰まっているので、まだまだ取捨選択が必要なのだろう。いったい新居のどこに置くつもりだろう。

 

 本に対して衣服は3箱に詰まっているわけだが、これはもう着ない、という服はいくらでもあり、新居に必要な衣服だけを詰めたら実にコンパクトにまとまった。

 捨てていい衣服しか持っていなかったと思えるほどだった。

 一方で恋人はどの衣服を持って行くかに悩み、本はほとんど置いて行くらしい。

 興味関心の違いが二人で明確に分かれているのがわかる。

 

 とりあえず持って行って、捨てるかどうかは向こうで恋人とも相談しながら、収納と相談しながら決めよう。