蟻は今日も迷路を作って

くだくだ考えては出口のない迷路に陥っている

ベローチェの冷やし抹茶ラテを飲んで卒倒しかけるの巻

 ローチェといえばめちゃくちゃ安いコーヒーチェーン店である。

 コーヒーがたしか1杯220円くらいで、喫煙席もあり、席数も多く、比較的清潔で、要するに220円払えば休憩を永遠にできる都会のオアシスだ。

 

 過日、私と恋人は買い出しに街へ繰り出し、いろいろと買い足し、重い荷物を持って暑さにあえぎ苦しみ、このまま遭難するんじゃないかというところで、ベローチェを発見した。

 助かった。そうおもった。

 だが、私は、安易にベローチェに足を踏み入れるべきではなかったのだ。

 

   ↓

 

 レジスタで注文をする。

 冷やしコーヒーを飲む気が無かったので、どれにしようか迷いながら、200円以上払って林檎汁を飲むのもつまらんとおもい、冷やし抹茶ラテを注文した。

 即座に提供された抹茶ラテの色を見て、笑った。

 

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  この色だったのだ。

 

 この緑は、あとで抹茶ラテを撮影し、そこから抽出した純粋なベローチェ抹茶ラテの緑色である。

 なにがおかしいのかよくわからない人が多いだろう。

 このように画像にしてしまうとただの緑だが、これがグラスになみなみと注がれてレジ横に提供された光景を想像してほしい。

 私は、死んだ池の水を汲んできたのかとおもい、笑った。

 

 「吾輩は抹茶ラテである」と言いたげな、あからさまな緑。

 象徴的で、説得力を持たせすぎた合成着色料的な緑は、むしろ自信がなさげだった。

 味に自身がないから、色味によって不足分を補っているのではないか。その表れだとおもった。

 

 はたしてその予想は当たった。

 

 啜ると、この緑汁、味がしないのだ。

 味が無いので、私は無症状のコロナウィルスに罹患したのかとおもった。

 恋人にも飲ませると、味がしない、と彼女は言う。

 私の味覚は正しかった。

 厳密に言うと、まったく味がしないわけではない。かすかに味がする。

 望遠鏡で覗いた先に小さく旗を振る抹茶がいる。そのくらいの薄味なのである。

 これなら水を飲んだ方がマシだ。この抹茶ラテは、すごく濁っていて口触りのぬるぬるした汁でしかないからだ。水の方がさっぱりしていて美味しい。

 砂漠を彷徨って3日ぶりに口にした液体がこの抹茶ラテだったら、あるいは美味しく飲めたかもしれない。それ以外でこのラテを美味しく飲める方法を思いつけない。

 天井裏に抹茶粉末と牛乳を設置しておき、雨漏りの滴りで抹茶エキスと牛乳を薄めて抽出し、さらに屋根裏によって濾すことによってつくったような、そんな味がする。

 だとしたら手間暇をかけて不遇なわけだが、これは会計から3秒で出てきた抹茶ラテなので愛しさはなく憎しみしか湧かない。

 

 とんでもない飲み物だ。

 半分も飲めなくて、グラスを前に茫然自失とし、ひどすぎる、と心に咽び泣いていたら、まもなく気分が悪くなり、足腰に力が入らなくなった。

 悪寒がし、眩暈がした。

「ふらふらしてる」と恋人に背中を支えられた。

 ほんとうにコロナに罹ったのだろうか。

 

 そのまま帰宅し、寝ていたら恢復した。熱もない。

 なんだったのだろう。呪いか?

 

 ベローチェの抹茶ラテによって体調を崩したのであった。