蟻は今日も迷路を作って

真面目な話からそうでない話まで。本当の話から嘘の話まで。蟻迷路(ありめいろ)という人が書いてます。

『チャーリーとチョコレート工場』から学ぶ人の怒らせ方

Amazonプライムで『チャーリーとチョコレート工場』を久しぶりに観た。

私が小学生くらいの頃に封切りされた映画で、それから5年に一回くらい、金曜ロードショーとか友だちの家とかでなんか機会があってなんだかんだ観てきた。原作の小説『チョコレート工場の秘密』も読んだ。

 

こう書くと大好きな作品みたいだが、実のところは腐れ縁のようなもので、作品に対する接し方は「機会があったから」観たし読んだという程度の消極的なものだ。すすんで観たことは一度もない。

こう書くと作品を貶しているような、ずいぶんと失礼な態度をとっているみたいだが、観はじめたら絶対に最後まで観るくらいには好きな映画なのだ。

オチもなにもかも全部わかってはいるけど勢いで最後まで観て、次は5年後でいいな、と毎回思う。

 

今回観たのも、恋人が観たことないと言ってアマプラで観はじめたからだった。

そしてやはり最後まで観た。

 

あらすじはシンプルだ。

信じられないほど貧乏な主人公チャーリーが世界一のチョコレート工場にイケ好かない子どもたち他数名と共にいろいろあって招待される。工場の不思議な装置や甘い罠、かなり変な工場長と後ろ暗い過去、はたしてチャーリーの運命やいかに。そんな話。

かなりかいつまんで語弊のあるような言い方をすればこの映画は「ポップなデスゲーム」である。

 

 

児童向けなのでとてもわかりやすくできている。

主人公の貧乏さはすさまじく描写され、お父さんは歯磨き工場のチューブのキャップを締める仕事に就労しもちろん薄給、夕食は毎晩キャベツを煮込んだスープのみ、立つのもおぼつかない老人4人と同居し(介護地獄)、自分の部屋(屋根裏)のベッドの脇の屋根は大きな穴が開き、家は崩れかけた豆腐みたいに傾いている。

そんな環境でも家族を愛し、愛され、めちゃめちゃいい子に育った主人公。心が豊かなのだ。

なんてわかりやすいのだろう。この映画には考察が入り込む余地を持たないほどわかりやすい。

「秘密のレシピ」と堂々書かれた文書をスパイに渡したり、嫌なやつが嫌なことを言ってむちゃくちゃに成敗される。

工場長の幼少期の歯列矯正は見るからに痛々しく、出てくるお菓子はどれも甘々しい。

シンプルでわかりやすく、だからこそ子どもが楽しめるし、大人は頭を空っぽにして笑えるのだ。

 

わかりやすく嫌な子どもはわかりやすく粗相して、次々と成敗される。この「成敗」がこの映画の見どころのひとつだ。

全身が膨張して青く染まったり、焼却炉に落ちたり、テレビで「転送」されて縮小コピーされたのちアメ伸ばし機でペラペラになるまで引き延ばされる。コミカルだがけっこうな目に遭っていて、正直やりすぎなところもある。過剰演出な「スカっとジャパン」のようなものだと思ってほしい。

成敗するとき「ウンパ・ルンパ」と呼ばれる小人たちが出てくる。

全員が同じ顔をして同じ服を着て統率の取れた動きをするさまは不気味である。言葉も通じず、表情の変化も乏しいので傍目からはなにを考えているのかいまいちわからない。

だが彼らは「成敗」のときだけ活き活きとコミカルに躍動する。

粗相した子どもの前にまさに躍り出ると軽快なミュージックをかけ、即興の音楽を奏で、これでもかと煽り散らした歌を見事なハーモニーで合唱する。

歌詞を一部引用しよう。これは焼却炉へ落ちそうな少女へ向けた歌だ。

 

イヤミな小娘ベルーカ落ちてった
今ダストシュートの途中で誰かに出会うさ
不思議な友達
変わっている友達に
今朝切り落とされた魚の頭とか
カキのシチューの貝殻
噛めないステーキ
他にも出会うさ
しびれるような臭いに
臭いよ
それが新しいベルーカの友達
落ちる途中で出会うさ
甘やかしたのは誰?言うままにしたのは誰?
わがままな彼女
誰がこうしたのか?
悲しいけれどもママとパパだよ

 

いくら粗相したからって、こんなのやりすぎだと思うな。

 

焼却炉に落ちて最悪の場合死ぬという場面で煽り散らす歌を軽快に歌われたらどんな人でも怒るだろう。登場人物たちが怒らず呆然としているのはあまりにも危機的な状況で怒っている場合ではないからだ。平生だったらキレると思う。

このような煽り散らす歌は計4回歌われ、ちょっとしたミュージカルのていを成す。もちろん、全曲曲調もメロディも異なる。

まったくひどい話なのだが、あまりにも煽るので笑ってしまう。

なんの恨みがあるのだろう。工場長曰く「ジョークが好き」らしいが度が過ぎている。

 

映画を観て以来、我が家では「歌」で煽るブームが来ている。

なにか失敗したり、ばかをするとリズムをとり、即興で歌うのだ。「こういう場面ではどう歌えばいいだろう」なんて話もする。

仕事で失敗したとき、上司や同僚がニコニコ肩を組んで私の周りを囲み、仕事ばかりか私生活まで揶揄する歌を歌われたらたぶん泣いちゃうだろうな。死ぬかもしれない。

歌は人を怒らせるのに最適な手段なのだ。

「歌で日本を元気に」なんて安く言うけど、歌の本領は元気付けるよりも「煽情」かもしれない。言葉をメロディに乗せることで馬鹿にしてる感が強調され、また言葉が深く染み込むようになる。

ウンパ・ルンパはそんな歌の機能を充分に教えてくれるので、最悪だ。

 

 

多少、教育にはよくない場面もあるかもしれないが、甘い画面とわかりやすい構成とポップでグロテスクな映画は子ども好みだ。大人になって観ても発見があっておもしろいので機会があったら観てはどうだろうか。

でもまぁ、私は、つぎは5年以上先でいいかなと思っている。