蟻は今日も迷路を作って

くだくだ考えては出口のない迷路に陥っている

『八日目の蝉』をまた見れるようになる日

お題「邦画でも洋画でもアニメでも、泣けた!というレベルではなく、号泣した映画を教えてください。」

 

『八日目の蝉』にはほんとうに泣かされて、嗚咽して声が出なくなった思い出がある。そのあと原作も読んでまたひどいくらい泣いた。

角田光代さん原作で知っている人も多い映画だろう。

不倫相手の子どもを誘拐した女の逃亡劇と、その子どもが大人に成長したときの葛藤を描く二部構成。母親とはなにか?母性とは?子どもにとっての親とは?そんな重いテーマな作品だけど、内容のおもしろさと役者たちの演技力に惹きこまれる。

邦画って演技力が気になってしまうと作品に入っていけなくなるんだけど、この映画は演技に関しては非のうちどころもなかった。というか、演技がとくによかった印象。

とくにラストの永作博美の、あのシーンが、ほんとうに、思い出しただけで、涙腺が緩む。

子どもを抱きかかえながら逃亡するつらさと罪悪感、焦り。けれども、子どもの存在が永作博美演じる主人公の生きる希望になる。

母親とは何か?をさまざまな視点から考えられる作品だし、母親とはこうあるべきだ、なんて説教くさい話でもない。母親は男の犠牲かもしれないし、免れようもなく女でもあるかもしれない。一般論で論じられる内容ではないけれど、少なくともこの作品の中では男がマジで悪い。

けっこう考えさせられるお話だ。

でも、この作品の中で「母親とはなにか?」の答えがちゃんと示される。

そのシーンが、ほんとうに、(以下略)。

 

この映画、大好きなんだけど、じつは一度しか見ていない。それも5年前とかだ。

頭痛になるほど泣いて、感情が滅茶苦茶になり、しばらくは白湯とお粥しか食べられなくなった(覚えてないが、ラーメンやカレーも食べた気がする。ハニトーも食べた)。

ともかく、そのくらいショックを受けて、人生で一番泣いた映画なので、怖くなってあれ以来見れていない。

「忘れた頃にまた見ようかな」なんて思いながら5年経った。ぜんぜん忘れないので見れない。

また見たいのだけど、見る前からため息をついてしまって、再生ボタンを押せないでいる。

まだもうしばらく、長すぎる余韻をしゃぶり続けることだろう。

 

原作の方がより濃度が高くて言葉の強さも印象的だが、おそらく映画では描かれなかった(忘れている)キャラクターたちの「その後」にも少しだけ言及していて、そこに救いがあって良かった。

たぶんだけど、作者は『幸せの黄色いハンカチ』を見たであろうシーンが書かれている。ネタバレになっちゃうのでここには書かないけど、そのシーンを読んで思い出した。

 

ドラマ版もあるらしいが、どうなんだろう。映画を越えられるのだろうか。