蟻は今日も迷路を作って

くだくだ考えては出口のない迷路に陥っている

はじめての衣裳合わせ

年に控えた結婚式へ向けて衣裳合わせに行ってきた。

衣裳合わせと言ってもせいぜいいくつかのウェディングドレスを覗き見して1着か2着を選ぶくらいかと思っていたが、200着以上あるうちから5着ほど選んで試しに着させてもらえた。

思いのほか種類も豊富でどれもが可愛く似合っていたので、妻はたいへん満足そうだった。

試着をさせてもらった、と書いたけど実際に着たのは妻であり、私はその間ひたすら椅子に座って待ち、ひとつ着たら写真を撮って感想を言い、また座って待っていただけだ。

一回の打ち合わせで終わるわけはなく、再来月もまたここに来る。一生に一度だからたくさん着てたくさん悩むべきだと妻には伝えているので、これからここが実家と思うくらい通うことになるだろう。無料だし利用すべきだ。

 

それにしても会場のホテルはとても綺麗で来るたびに惚れ惚れする。良い会場を選べてよかった。

建物の造りが綺麗なのはもちろんなのだが、新興宗教施設かってくらい隅々まで掃除が行き届いていて、床はそのまま舐められそうだし、壁に触れたら火傷をしそうなくらいピカピカに磨かれている。

重箱の隅をつつくなんて言葉があるけれど、この会場の重箱の隅にあるのは親切丁寧清潔でできた「誇り」である。

衣裳室も個別になっているので居心地が良く、調度品には品格が漂っていてチープさは微塵もない。

天井も高く、空間的な広がりがあって閉塞感を一切感じさせない。客を楽しませ、快適な気持にし、日常生活から切り離そうとするその姿勢はなんだかディズニーランドを思い起こさせる。

また、スタッフの方々の対応も素晴らしくて、変な話だけど私もこのホテルで働きたいと思わせてくれるそんな人たちばかりなのだ。

みんながこの仕事に誇りを持っているように見える。ハキハキ喋り、好きなものに自信を持ち、背筋を伸ばして歩き、たしかに幸せを届けようとしてくれる。なによりもよく笑う。

ああ、こういう人間に私もなりたい。

行くたびにそう思う。

こんな風に生きられたらどれだけいいだろう。

ここで働く人々と言葉を交わすたびにそんな憧れを抱く。

「ここで私たちと一緒に働きませんか?そして素晴らしい人生にしませんか?

今までのあなたは本当のあなたではなかったんです。

これからの本当のあなたになるために、私たちと修行をしましょう。本物の人生を歩みましょう!」

そんなふうにブライダル担当から手を差し伸べられたら私は縋りついてしまうかもしれない。

 

やっぱり新興宗教施設なのか?