蟻は今日も迷路を作って

くだくだ考えては出口のない迷路に陥っている

寝に帰る

日残業が続いている。

家に帰ったらご飯を急いで食べて、ウイスキーをダブルで一杯だけ飲み、歯を磨いて寝る。これだけだ。

シャワーには朝入るようにして、できるだけ睡眠時間を長く確保するように心がけている。

妻とは少しだけ喋る。

「わたしなんかより、仕事が大事なんでしょう」

「君が大事だよ、でもね…」

このようなやり取りを毎日し、妻を抱きしめて、なるべく笑顔でおやすみを言う。

仕事も大事だし、妻も大事だ。でもこれって、両足も両手もどちらも失うことができないように、比較ができない大切さの上に成り立っているので、答えようがない。

仕事もやらなきゃいけないし、家族も大事にしなきゃならない。義務ではなく必然だ。

やれやれ。

「そのうち、そんなことも言わなくなるくらい、夫の存在が鬱陶しくなるから、今が華だよ」

先輩にそう言われた。

「わたしも昔は旦那が帰ってこないと寂しかったけど、結婚して5年も経つと今なんともないからね。むしろ、帰ってきちゃったの?って感じ」

やれやれ。

 

寝てしまうとすぐに明日になる。

明日になったらまたやることが山のようにある。

前職だったらこういう状況には嘆き悲しみ、人生なんて、とさめざめ泣いていただろうが、転職した今はなんてことないように思える。

これが普通、というか、こういう日もあるよな、と。

こういう日がどれだけ続くのかわからないけど、自分は大丈夫だと平気の平左でいられるのだ。

転職をして良かった。

いろいろと結果を出すのはこれからのことだけど、自分には今の仕事が楽しいし、結構向いてると自負している。

 

休みになったら妻を構いたいし、おしゃべりをしたり、一緒に楽器を弾きたい。

こうして頑張れるのも、大切なものがいくつもあるからなのだ。