蟻は今日も迷路を作って

くだくだ考えては出口のない迷路に陥っている

仕事か、家庭か

曜日はいろいろと悪いことが重なってしまい、家に着いたのは午前0時前だった。

それでも仕事が終わったわけではなかったので、いくつか持ち帰ってきた。

こんな状態だけど充実した気持ちがあって、そんなに苦じゃないというか、まぁしょうがないよね、という気分に満足感すら覚えていたのだが、家にいた妻は違ったようだ。

「まだ入社半年なのにこんなのおかしいって」

私のいる会社がブラックなのではないかと指摘をしてきたのだ。

そう。

正直言って、ブラックである。固定残業代だし。

でもそれは、この業界そのものの体質というか、業種的にどうしても手を動かさないと仕事が終わらないという側面があって、しかもそれを他の人が助けることはできないので、とにかくやるしかなくて、結果として時間外労働をせねばならない状態に陥るのである。

時間外労働を強いられたらそれは大きな問題だと思うが、私の場合は自ずからそれをやってしまっている。

だから苦じゃないし、入社する前からこうなることは予想していて、覚悟を決めていたから、自分の決定に対する責任だと思うし、だいいち、私はこの仕事が好きなのでなんら問題ない。

でも、私の労働時間が伸びることで、妻には家事の負担をかけてしまっているし、平日のコミュニケーションの時間が大幅に減ってしまったのも事実だ。

妻に言わせれば、家での時間が減ったのになにやら充実した顔つきで帰宅してくる私に苛立ちも覚えるという。

妻は自身の仕事に対してそんなに積極的に好んでいるわけではなく、やりたいことをやっている私がすこし鼻につくらしい。

じゃあやりたいことをやればいいじゃない、と伝えたが、やりたいことなんて別にないらしい。

ただ、夫婦の時間を大切にして過ごせればそれでいいのだと言う。

からしてみれば、私は自分のやりたいことに身を注いで家庭を蔑ろにしているように見えるのだろう。

たしかに、言われてみれば、そうだった。

 

身近にこういう例がいた。

祖父だ。

祖父は映画のプロデューサーをやっていて、ほとんど家に帰らなかったらしい。その結果、家族(私の母)からの信頼を失い、自分の妻の死に目にも会えなかったばかりか、息子とは不仲になり、最期は団地の一室で癌と闘いながら孤独に過ごした。

父もそうだった。

仕事ばかりで遊んだ記憶があまりない。土日も家にいなかった。父の場合は、不倫もしまくっていたので祖父と同じくくくるのはすこし違うのだが……。

 

家庭を蔑ろにしているわけではないけど、比重が仕事に傾きつつあるのは事実だし、現に妻との時間を失いつつあるのは問題である。

今後、もしも子どもができたとしたら、子どものための時間も確保できないだろう。

私は家庭を顧みない親として子どもにとっての悪者に成り果てるのだろう。

反省した。

でもどうすればいいのだろう?

時間の使い方を整理して、残業は遅くとも2時間までとし、あと家でできる分は持ち帰ってやるしかないだろうか。でもそれも結局は……。

なにかしらの対策を講じなければならない。

私はなにも犠牲になどしたくない。