蟻は今日も迷路を作って

くだくだ考えては出口のない迷路に陥っている

失われていく文字

ソコンが壊れかけている。思春期に少年から大人に変わるように。

ノートパソコンの、数字キー1〜2と8〜0、そして「J」のキーが反応しない。

「J!J!って連呼して祈りながら押すと打てるようになるよ」と妻から啓示を受けたので律儀に数字を連呼して祈っていたのだが、それでもまったく反応しない。

よく考えたらパソコンは神具ではなく、科学の機械なのだから当然だ。言霊が効く相手ではない(妻の方便だったという説もある)。

とくに数字が入力できないのが苦しい。私たちはこんなにも数字に縛られていたのかと実感せざるを得ない。

今まで邪魔としか思っていなかったNumLockキーを使い、文字盤で数字を入力するものの、NumLockにおける「1」は「J」に該当するので、1だけはどう足掻いても入力できず、「いち」と入力して変換するか、IMEパッドを使って入力している。

私のパソコンは二進数すら満足に打てないのだ。

テンキーを買おうとも思っているが、それもなんだか馬鹿馬鹿しい。それならパソコンを買い替えたい。

 

ハードの故障か、それともソフトの故障なのかもよくわからない。

押すと普通に反応するときもあって、それがこちらの買い替え判断を鈍らせる。パソコンを使い始めて30分くらいは反応しないのだが、しばらくすると反応するようになり、また1時間くらいすると使えなくなる。

こんなことがあってよいのか、と思う。

前職はITサポートデスクをやっていたので、こういった入力ができなくなるトラブルはよく対応していたのだが、ハードでこんな壊れ方は聞いたことがない。

デバイスドライバのエラーかと思い、再インストールをやってみたものの改善する気配はない。

解体もできないし、キーボードの隙間を掃除してみたものの効果はない。

 

しかし、さてどうしたものか買い替えるか、と悩んでいたら、パソコンが突然直った。

これまでの不具合が悪い夢だったかのように覚めて尋常に戻り、どのキーもなんの不自由もなく入力ができるようになったのだ。

しかもそれは時間制限ではなく、毎日どれだけ使っていても、不具合はこれっぽっちも起きない。

何がどうしてどうなったのかよくわからないが、一安心である。

数字はいくらでも打てるし、「J」はいつもよりカーブがくっきりとして見えた。それが嬉しくて、JAPAN、JAPANと何度もメモ帳に入力し、画面は欧米人の右翼みたいになってしまった。

外は晴れ、よい天気だった。春になり、生き物たちが背を伸ばして過ごしていた。

 

だか、そんな日々は長く続かないというのが世の理。

それからしばらくして、今はまた不調の時期になってしまった。

数字はさらに3、4、7が入力できなくなった。

文字が少しずつ失われている。

意味がわからない。

もういよいよ買い替え時なのかもしれない。かれこれ5年半は使っているので寿命と言われれば納得できる。

私はこのパソコンでブログを書き、卒論を書き、履歴書やレポートを書き、小説を書いてきた。映画も見たし、マインスイーパを合計72時間はプレイした。エロサイトも巡り歩いた。思い出とデータがいっぱいである。

次に買い替えるのなら、MacBookがいいと思っている。私はiPhoneユーザーなのだがこれまでWindowsを使っていて、データを移すときに互換性がないのでWindowsMacのアプリを入れて使っており、それがとてつもなく恥ずかしかったのだ。

でもそれ以外の機能ではWindowsが使い慣れているので、どうしようか迷っている。

それに、WindowsMacではときどきファイル形式に互換性がなくて文字化けをしたりもするので、困りものだ。前パソコンからデータを引き継いだものの、Macでは表示できないとなると困ってしまう。

考えなきゃいけないことはたくさんあるし、憂慮もいろいろとある。大人になるとは、まったく厄介なことだ。

壊れかけのパソコン。

 

 

追記

さっき、「F」と「F10」も使えなくなった。