蟻は今日も迷路を作って

くだくだ考えては出口のない迷路に陥っている

おれはアイドルになれない〜Juice=Juiceの日によせて〜

Juice=Juiceが、好きだ。

ちょっと生活に支障をきたしてるくらい好きだ。

「生活に支障をきたしてる」なんて言うとメンバーが心配するかもしれないので、これ以上は言わないけど、とにかく、それくらい好きだ。

好きすぎて、夢を見た。

自分がJuice=Juiceに入る夢。

意味がわからないのだが、とにかく私はJuice=Juiceに加入し、みんなと歌い踊り、汗を流し、笑顔を振りまき、ときには真剣な目つきでアリーナの誰かを見つめるのだった。

その夢から覚めたときに、私は、Juice=Juiceに加入をしたいのだと、深く納得し、同時に、無理を悟った。

 

なぜ私がJuice=Juiceに加入できないのか、理由はいくつかある。

まず、男だ。

Juice=Juiceは女の子のグループであるから、男性は入れない。

そして、27歳だ。12月で28歳だ。

Juice=Juiceの最年長は植村あかりさんの24歳で、12月には25歳になり、そして来年には卒業してしまう。彼女たちは25歳より歳をとらないのだ。

かくいう私は男で、しかも28歳になろうとしていて、年々ヒゲの伸びるスピードがはやくなり、毎日飲酒をしているため内臓が悪いのだろうが肌荒れが治らず、仕事は毎晩遅くまでしていて、最近は朝起きると体が痛い。

残念ながら、このような状態のアイドルなどといったものは、存在しない。

歌も音痴ではないものの上手くはないし、ダンスにいたっては「顰蹙」という言葉が相応しい出来萎え。

ただ、歌とダンスは努力次第でどうにかなるかもしれない(そういう努力は実るということをJuice=Juiceの子たちが教えてくれた)。

だが、歌とダンスがどうにかなったところでJuice=Juiceには加入できない。魚に生まれたからには地上を走れないように、柿の木から桃が実らないように、雨が地面から降らないように、私はJuice=Juiceに入れない。

なぜなら私は男で、28歳だから。しかも結婚してる。Juice=Juiceへの加入は100%無理だ。

仮に誰かが融通を利かせて私をJuice=Juiceに加入させてくれたところで、私はそんなJuice=Juiceを見たくないし、メンバーもめちゃくちゃ気をつかうだろうし、いたたまれない。メンバーカラーは鈍色か、老いた猿の肛門色だろうな。

 

こうなった私にはもう、全力で彼女たちを応援するしかない。私のぶんまでがんばって!と妙な挫折を一方的に担がせて。

 

Juice=Juiceの好きな楽曲で「Borderline」という曲がある。歌詞を一部引用させていただく。

ここが人生のborder line

ドキドキのborder line

私 変われるはずでしょ?

今日ここで小さく舵を切れたら

大きい未来が動き出す

この世界はwonder land

トキメキのwonder land

じれったい自分を脱ぎ捨て

「出来っこないさ」のその先にいる

見たことない私のこと 探しに行こう

 

「きっと出来るさ」のその先で待つ

夢叶えた私のこと 迎えに行こう

この歌の最後の「迎えに行こう」のところは、メンバー全員によるユニゾンで歌われる。

この歌をステージの上で歌う彼女たちは、その夢を叶えた場所にいて(もしくはまだ道半ばかもしれない)、そうしてステージの上から私に投げかけるのだ。

「夢を叶えよう、一歩を踏み出そう」と。

 

私が女児だったら、間違いなくこの歌を聴いて、ステージの上で輝くおねえさんたちを見て、手を差し伸べられたら、アイドルになりたい、私もそこに立ちたいと思っただろう。

きっと思った。

今からすごいこと言う。

ああ、女児になりたい。

せめて1%の可能性を持ちたい。

 

好きすぎて憧れはじめると、めっちゃ推すとかそういうことよりも、その人になりたくなる。