蟻は今日も迷路を作って

くだくだ考えては出口のない迷路に陥っている

旅行したい遠くへ行きたい

縄行きてぇ~~~~~~~~~~。

沖の縄。沖縄。行きたい。

あそこは現実から完全に切り離されている楽園だ。

たぶん、沖縄にいすぎると夢と現実の区別がそのうちつかなくなって、夢を現実と思い込み、現実を底知れない悪夢だと思い込んで、二度と元の生活には戻れなくなるだろうな。けどそれで良くないですか?全然問題ないですよね。

白いビーチ。真っ青な海は空と区別がつかないほどで。島に流れているゆるやかで淡い時間。どこかから聞こえてくる三線。チャンプルー。サーター・アンダギー。

ああ沖縄沖縄。島人だけじゃなく世界の宝だよ。

沖縄に行きたくて発狂し、部屋で「もしもシーサーが爆笑したら」という支離滅裂な物真似を披露して恋人を呆れさせ、困憊させるのが趣味になりそうだ。そんな趣味は嫌だ。

 

じゃあ沖縄に行けばいいじゃん、ということなのだが、そういうわけにはいかない。

この時世だからあえて説明するまでもないでしょう。(※)

 

※後世の研究者のためにこの部分を説明しておくと、これを書いた2020年はCOVID-19と呼ばれる新型コロナウィルスが世界的に流行し、多くの死者・重傷者を出した年であり、日本国内のみならず世界的に人々の移動や物流が規制された。そのため、旅行は自粛され観光業界に深刻なダメージが及んだ。

 

そういうわけです。

 

日常に疲れ果て、現実逃避に走りがちな私と恋人は、以前はよく旅行をしていた。

年に3回以上はどこかへ泊まりに出かけていた。

あの頃は実家暮らしでお金に余裕があったからそれができたわけで、今のように同棲して爪に火を灯して生活している身分ではせいぜい年に一回の小さな旅行ができればいいくらいだろう。

だが、そのお楽しみすら奪われてしまった。

 

今年は多くの人が、多くの楽しみを、喜びを、幸福を奪われた。

冗談観たいだけど、冗談みたいに深刻なウィルスがフィクションでもなんでもなく流行したせいで、だ。意味がわからない。学生はかけがえのない大切な時間を永久に損なった。この時間を取り戻すには全員で留年するしかないのだ。冗談じゃない。

 

ああ旅行に行きたい。

沖縄に行きたい、北海道に行きたい、大分の「ハーモニーランド」に行きたい、金沢に行きたい、銀山温泉に行きたい……。

ナントカトラベルキャンペーンを利用して全国を行脚してやりたい。

でも、旅行したことによって「もしも」のことを想定すると、本当に冗談じゃないので旅行には出かけない。

 

とにかく閉塞感。

マスクの苦しさにも馴れてしまったけど、ふと昔を思い出すとどうしても今「できないこと」は昔当たり前にやっていたことなんだって思い出してしまって、私はまだ大人になりきれていないから「新しい生活様式」に染まれずに、ただただヤキモキした気持ちを「もしもシーサーが爆笑したら」などといった支離滅裂なことをして昇華(消沈)するしかなく、もうすぐ今年が終わるということを忘れようと努めて不気味に爆笑するのであった。