蟻は今日も迷路を作って

真面目な話からそうでない話まで。本当の話から嘘の話まで。蟻迷路(ありめいろ)という人が書いてます。

捨てた家電と青い花

れた家電はどうすればよいか?

人によって答えはさまざまだろう。私の友だちは直すと答えたし、会社の先輩は直るまで放置する、と言っていた。母は壊れてない、と言い張って湯気の出なくなったアイロンをかたくなに使い続けている。

私も基本的には直す派なのだけど、そこは素人、どうしようもなくなったら捨てるしかない。捨てて新しいものを購入するしかない。

家の掃除機が壊れてしまった。

掃除機が壊れるとどうなるか。ゴミを吸わなくなってただ煩く音をまき散らし温風を吐いて不快な思いをさせるどうしようもない木偶の坊になる。

妻がヘッド部分に張っていたなにか糸?のようなものを誤って切ってしまってからゴミを吸わなくなった。その糸が何なのかわからないしそれが原因かも判然としないが、とにかく吸わなくなった掃除機を有難がっても仕方が無いので新しいものを買わねばならなかった。

買わねばならなかったが、べつに掃除機に金をかけたい気分にはならなかった。誰かから恵んでもらえないかな、などと甘えたことを考える甘ったれた日々を過ごす。季節が巡る。

ヘッドを外して、なんていうのかわからないけど、ヘッドを取り付ける狭い口部分を床に押し付ければゴミを吸わないこともなかったので、そのような方法でもって非効率な掃除をしていた。不思議なことにヘッドを付けなければ掃除機はごうごうとゴミを吸う。そんなことで4カ月くらい使っていた。

 

つい先日、掃除機屋さんをやっている妻の御友人が結婚祝いと製品の動作確認を兼ねて無料で掃除機を贈ってくださった。

日頃からよい行いをしておくものだ。私も友だちを多く持っておこうとそのとき思った。

壊れた掃除機はまさしく無用の長物になったので粗大ごみとして区に出すことにした。

 

粗大ごみ回収チケットをコンビニで購入し、区のホームページより回収日を予約、必要情報を入力して当日朝に収集場所へ置いておくと、音もなく回収してくれるという。

掃除機のついでに大学生の頃から使っていた空気清浄機能付きの除湿器も捨てる。

これは電気代が凄まじくて、昔住んでたアパートではずいぶん助けられたけど今の住居ではあまり効果を発揮せず、やたらと場所をとるだけの四角い物体と成り果てていたものだ。

回収チケットを掃除機と除湿器に貼り付けて、集合住宅前に夜のうちに置いておいた。

よくこうやって捨ててあるのを不届き者が窃盗するなんて話を聞くが、本当にそれをされたら悔しくてならないだろうな。お前が持ってくなら回収券買わなくてよかったじゃんって。

だから、仮に盗んだとしても、盗んだ人も回収業者も、盗まれたことは私には黙っていてほしい。

「この場から無くなる」ことが私にとっては大事で、正規に回収されようが不当に盗まれようが、どうだっていいのだ。

街灯の下でアスファルトに接している掃除機と除湿器の組み合わせはシュールだった。ふと思い立って掃除機をアスファルトにかけてみる。何の意味もない。どうせ壊れているのだから砂粒のひとつも吸えない。ただこれがお前の最後の仕事だと言ってやりたかったのだ。除湿器にはそれを見守らせた。

 

翌日の昼頃、ゴミ捨て場を見に行ったらきっちり回収されていた。

いつ業者が来たのかもわからぬ。まったく音もなく仕事をしていったようで大変ありがたかった。

掃除機と除湿器を置いていた街灯の下を見ると、小さい青い花が咲いていた。