蟻は今日も迷路を作って

くだくだ考えては出口のない迷路に陥っている

こっくりと、ぽっくりと

近の私は落ちるように眠っている。

ベッドに入ったら30秒以内に眠りの湖の底にたどり着いている。

眠れないよりかはずっといいけど、なんだか怖い。ほとんど気絶みたいなのだ。

だからといって深い眠りというわけではなくて、しょっちゅう怖い夢を見てはうなされて起きる。誰かに滔々と指摘という名の悪口を言われたり、羊の顔が溶けたり、空が赤いまま戻らなくなる夢などだ。

だから眠るのが怖いのだけど、ベッドに入ると、即、寝。

反対に妻はここ最近眠れぬ夜を過ごしているらしい。

何が原因かわからないが、さぞつらいだろう。

あまり眠れなかった、と毎朝報告されるたびに私までなんだか疲れてくる。実際、アラサーになってから寝たくらいでは体力が回復しなくなりつつある。

 

今朝電車で、私の前の席に男が座った。

彼は一駅前に乗ってきたばかり。忙しそうな息をしていて、まぁ朝だし、そういう人もいるので普通だなと思っていたのだが、座るやいなや、即、寝始めた。

目を瞑るくらいなら誰だってあるだろうけど、この人は座ってすぐ、ものの数秒で、ぽっかりと口を開けて、ときどきびくりと体を震わせて、真剣に眠り始めたのだ。

あまりにも尋常ではない速度だったのでそれこそ気絶かと思った。ちょっと心配した。

次の次の次くらいの駅で目を覚ましてキョロキョロしていたので無事ではあったようだ。本人は何もおきてないような顔をしている。

 

この間は仕事終わりの電車で立ちながら眠る女の人を見た。

私よりも少し年下くらいの女の子で、髪の毛は青と紫とピンク、服装もカラフルで、ぱっと見ギャルってかんじだ。

その彼女は、半目で白目を剥いて、膝をガクガクしながら吊り革にすがりつき、眠っていた。

誰か席を譲ってやればよいものを。

その車両自体、なんだかカラフルな服を着た人が多くて異様だったし、日本語以外の言語が頻繁に飛び交っていたから、何が起きても不思議ではなかった。東南アジアの人がスマホをスピーカーにして電話していた。車内で電話する東南アジア人で、スピーカーにして会話していなかった人を見たことがない。

 

みんな何かと闘っている。眠りくらい健やかでありたい。